この記事は、療育支援者の方向けの記事です。保護者の方にもお子様の個別支援計画書を読み解くヒントとしてお読みいただけますが、一部専門的内容が記載されている場合がありますので、ご了承ください。
こんにちは。発達支援ゆず代表の西村猛です。
療育を実践するにあたって、切っても切れないもの。それが「個別支援計画(書)」です。
個別支援計画書とは、「療育を行っていく上で、現状や今後の目標などを記載した書式」です。
初回利用時と半年ごと(半年以内)に作成し、保護者の方に説明するとともに、その書式をお渡しする形です。
作成については、多くの事業所さんでは児発管の方が作成されていると思います。
発達支援ゆずでは、担当者が案を作成し、児発管が監修と保護者の方への説明を行っています。
個別支援計画書は、お子さんの現状と今後の目標、そしてその目標を達成するために何をするべきか、ということを書かれている必要があります。
反対にいうと、「できないことを羅列しているだけ」であれば、それは個別支援計画書としては不十分な内容である、と言えます。
できないことを指摘するだけなら、誰でもできます。
個別支援計画書は、未来を見据えたものでなければなりません。
そこで今回は、個別支援計画書を作成する際に、考えておくべきポイントと、スムーズに作成できるコツをご紹介します。
よかったら、ご参考にしてください。
個別支援計画書を作成する際に、押さえておくべき5つのポイント
個別支援計画書を作成するためには、以下の5つの押さえておくべきポイントがあります。
- 評価(できないことの指摘に終始しない)
- 評価結果の読み取りと課題の整理
- 課題の抽出
- 目標設定(短期と長期)
- プログラムの立案
ひとつずつ見ていきましょう。
1.評価
文字通りお子さんの状況を確認することです。この評価には外から見られる現象だけではなく、一見課題と思われる行動などの裏に隠れている本当の理由を見つけていくことも含まれています。
2.評価結果の読み取りと課題の整理
個別支援計画を作成するにあたって、最も大切な部分です。
評価結果はあくまでも結果でしかありません(例えば体幹筋が弱いなど)。
そのため、次に行うことは、その結果(課題)が、お子さんの日常生活の中でどのように関係しているのか、について考えていくことです。
例えば、上記の体幹筋が弱い、という評価結果だとすると、体幹筋が弱いことと、お子さんの日常の課題を結びつけて考える必要があります。
具体的には、「体幹筋が弱いことで、まっすぐに椅子に座ることがしんどい」→「頬杖をついたり、片足を椅子に上げたりする」などです。
もちろん体幹筋が弱い、ということ以外にも色々と評価をされると思いますので、これらの課題(問題)を整理することが必要になります。
例えば、「椅子に座って先生の話を聞く、という活動の際にすぐに離席をしてしまうが、これは疲れるからでは?」「だとすると体幹筋の弱さが離席の理由になっているのかもしれない」などです。
このように考えると、「すぐに離席する→集中力がない(飽きっぽい)」と考えていたことが、「椅子に座っていると疲れるから、離席する(立ち歩くことで休憩しているのでは?)」といったように、全く別の視点で現象を捉えることができるようになります。
3.課題の抽出
課題の理由が見えてくると、後は簡単です。
色々と考えられる課題とその理由をまとめていくだけになります。
課題の抽出とは、思考したものをまとめる(箇条書きにするイメージです)という意味ですので、単にシンプルにまとめるのみとなります。
4.目標設定(短期と長期)
3.で抽出した課題の目標を、「3ヶ月〜6ヶ月程度で達成できそうなもの」と「6ヶ月〜1年程度で達成できそうなもの」に分類します。
このときに、最も重要なことは「考えられる課題と目標設定が合っていること」です。
例えば課題として、体幹筋が弱く椅子に長く座ることができないという課題が挙げられているのに、目標設定が「椅子に長く座れるようになるために、我慢することを学ぶ」という目標設定になっていると、これは課題と目標が「合っていない(整合性がない)」ということになります。
5.プログラムの立案
見つけた課題と、それに合った目標設定ができれば、プログラムは自ずと出てくると思います。
体幹の持久力が弱いので椅子に5分程度しか座れない(課題)
→半年後には10分程度は座ることができるようになる(目標設定)
→鬼ごっこや手押し相撲など体幹筋の持久力が高まる遊びや活動を取り入れていく(プログラムの立案)
このような方法でプログラムを構築していくと、どんな遊びをすればいいかは比較的簡単に見つけることができます。
もし、遊びプログラムが思いつかない、何をするべきかよく見えないなどがある場合は、評価と課題の整理が行えていないかもしれません。
その場合は、プログラムをひねり出そうとするのではなく、まずはお子さんの状況をよく観察し、課題につながる原因(理由)を考えるようにすると、スムーズにプログラム立案まで進めることができると思います。
マクロ視点とミクロ視点の使い分け
評価内容をまとめたり、目標を設定する際に必要となる視点が「マクロ視点」と「ミクロ視点」です。
マクロ視点とは、全体を俯瞰して見る視点です。
例えば、お子さんの情報について、生活場面全体を見るようなイメージです。
一方でミクロ視点とは、細部をしっかりと見ていく視点です。
例えば、お子さんの好きな感覚刺激と苦手な感覚刺激を確認していく、などのイメージです。
これらの視点は、どちらも大切です。
お子さんを広く捉えたり、細部に注目したりする中で、お子さんの全体像からは一見して見えない部分に気づいていくことができます。
これらの視点を適宜使い分けていくことが必要になります。
短期視点(目標)と長期視点(目標)
もう一つ大事な視点は、短期視点・長期視点です。
個別支援計画では、目標設定を行うと思いますが、このときに短期と長期の目標を設定します。
短期目標の時期は概ね3ヶ月〜6ヶ月ほど先を、長期目標の時期は概ね6ヶ月〜1年ほど先を見越して計画します。
短期目標は進捗度合いによって随時変更していくことが大切です。
なぜなら、短期目標を積み重ねていくことで、長期目標が達成されていくからです。
短期目標の時点では、小さな差(例えば方針の差)だったとしても、1年後には大きな差になっていることもあるからです。
そのため、短期目標はプログラムで言うところの「スモールステップ」としての役割があります。
スモールステップを積み重ねていくことで、やがて大きな目標達成につながると思いますが、個別支援計画においても同様のことが言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
個別支援計画は、お子さんの現状を正しく分析し、直近の目標とそれを積み重ねていった先にある将来的な目標を適切に設定するという意味において、とても重要な意味を持つものであるといえます。
また実践の場では、そのまとまった情報を保護者の方に説明し、「よりお子さんに対する理解を深めていただく」という意味においても、重要な書類の一つになります。
個別支援計画書の作成に悩まれている方がおられましたら、上記でご紹介したポイントを参考に、計画書を組みててみてはどうでしょうか。
発達支援ゆずの療育の特徴は以下の通りです。
①保護者支援(保護者の方に寄り添う)がとにかく大事だと考えている(親子通所にこだわる理由)
②マンツーマン療育・親子通所を通して、お子さんの将来を見据えて、ゆっくりじっくり療育を進めていく(◯◯ができるようになる、といった目先の目標だけを追い求めることはしていません)
③支援者自身も療育実践を楽しめる、学べる(スタッフの楽しい!が保護者の方やお子さんに伝播するように)
現在ゆずでは、こんな私たちの方針に賛同していただける方を求めています。
まずは事前オンライン説明をご活用いただき、発達支援ゆずの理念や働き方などについて知っていただければと思います(納得されたら正式にエントリーしてください)。