これまで、YouTube動画を更新した際、発達支援ゆずのトップページに、一定期間のみ表示されるようになっていました。
しかしこれだと、せっかく頑張って作った動画が、(トップページから消えると)気付かれにくくなっていたということと、「ブログ記事書くよりも、動画の方が沢山の情報が入っている分、沢山伝わるんじゃね?」ということもあって、動画が更新される毎に、ブログ記事として紹介していこうと思いました。
ということで、今回は標題の通りです。
療育では、「苦手な感覚があれば、慣れさせていきます」と言われることもあるかもしれませんが、医学的に見て「それは、あり得ない話」です。
なぜなら、苦手な感覚がなぜ苦手か、というと、意味はないからです。
つまり、脳が苦手と感じるから、という以外に理由はないのです。
嫌なものは、イヤ!
それだけです。
もし、それをイヤじゃないようにしようとするなら、脳神経のつながり(ネットワーク)を変えるしかないです。
もちろん、残念ながら、今の医学では、脳神経のネットワーク(つながり)を、薬や手術で変えることはできません。
つまり、医学的にそれは、非現実的ということです。
医師や研究者でも難しいことを、いち療育支援者が変えられると思いますか?
その支援者の中には、「初心者歓迎!誰にでもできる、子どもと遊ぶ簡単なお仕事です!」という求人文句に応募してきた人も含まれています。
※ぜひIndeedなどで、療育事業所の求人サイトを見てみてください。「誰にでもできるお仕事」「経験は必要ありません」「子どもと楽しく遊ぶお仕事です」という文言がオンパレードです。
それでも「療育で、苦手な感覚を慣れさせて行きます」という言葉を、信じますか?
信じたい気持ちは、分かります。
この子のために、という気持ちも分かります。
ですが、そのことに時間をとられ、意識を奪われてしまっては勿体ないです。
特に幼児期は、小学校以降の基礎を作る大事な時期です。
その時期を、一見魅力的な「慣れさせます」という言葉に、振り回されては「MOTTAINAI」です。
医学的根拠なんてないのですからね。
ですが、ここで裏話。
イヤな感覚刺激のある遊びを、イヤと言わせない簡単な方法があります。
それは「怖がらせて主張させない」という方法です。
「イヤだ」というと、叱られる。お尻を叩かれる。
それを繰り返していると、子どもはだんだん「イヤだ」という主張をしなくなります(誤学習をしてしまうわけですね)。
イヤだと言わなくなる代わりに、意志の表出が減ります。
そうなると、「おとなしくなった」と勘違いされます。
そして、「やっぱり療育では、厳しく接した方が、子どものためになるんだ」という噂がまことしやかに語られるようになります。
いわゆる負のループが起こります。
やがて子どもは主張することを止めていき、いわゆる「やりやすい子」になっていきます。
そして、体が大きくなってきたときに、鬱屈したエネルギーが爆発します。
爆発するとは、「かつて自分がされたことと同じようなことをする」です。
つまり、力で押さえつけられてきた子どもは、自分の力にまかせて他者(親御さんも含む)を押さえつけようとします。または、暴力を使って反抗しはじめます。
「人に言うことを聞かせるためには、怒鳴ったり、叱ったり、暴力をふるえばいい」と思い、そのように行動します。かつて自分がそうされたように(この事例は本当に多いです)。
もちろん、子どもは加害者ではなく、被害者ですよね。
親御さんは、「苦手なことを克服させる療育」を選んでしまった、という意味では一部責任があります。
ゆずが(というよりゆずのおっちゃんが)、なぜこれほどまでに「克服させる療育」について警鐘を鳴らしているかというと、今幼児期を過ごしている保護者の方に「あの時、気付いていれば・・・」と思ってほしくないからです。
後悔先に立たず。
せっかくご縁があって、私たちのサービスを利用してくださっている方々(このブログを読んでくださっている方も)に、後悔してほしくないです。
全くご縁のない方なら、「別に知らんけど。自由にすれば?」と思いますが。
また、こども発達LABO.のYouTubeチャンネルにも「幼児期にもう少し正しい知識を持って療育を選べば良かった」「今から戻れないですよね」といったコメントをいただくことがあります。
残念ながら、戻れません(当たり前のことですが)。
こういった先輩保護者の生の声を、ぜひ参考にして、「今、この子に、何が必要か」ということを考えてあげてください。
「子どもを変えます!」「できないことをできるようにします!」という魅力的な療育があれば、盲信するのではなく「その根拠は?」と、常に検証する習慣を持ってください。
それが、将来の「こんなはずではなかった」を防ぐ最大の方法になります。
動画でも繰り返しお話していますが、大切なのは「子どもを変えること」ではなく、今の子どもの状況を理解してあげること、そして工夫してあげること、です。
だから、感覚の特性を「変える」ような取り組みをするべきではないのです。
子どもは大人(または親)の付属物ではありません。コントロールする対象ではありません。
一人の人間として思うことを主張することができ、その主張に対して大人はできるだけ配慮してあげるという姿勢が必要です。
子どもには療育プログラムを、あるいは療育そのものを拒否する権利があります。
拒否されたら、叱るのではなく、叩くのではなく、「どうすれば気分良く遂行してもらえるか」という方法を考え、実践する。
これが、「子どもの権利を護る」療育であり、ゆずの目指すべき療育の在り方なのです。