「療育のイロハ」は、これから療育を始めることになった保護者の方に、「療育とはどういったものか」「どんな視点で療育を受けさせるのがよいか」「効果的な療育事業所の選び方」などについて解説しているシリーズです。
今回は、「叱る(厳しく接する)療育」の課題について、ご紹介します。
結論から言いますと、叱る療育は、一見効果的なように見えるものの、将来(特に小学校高学年になった時)引きこもりや不登校につながる、というリスクを伴っています。
自閉スペクトラム症などの発達特性のあるお子さんは、自分に自信がない、つまり自己肯定感の低いお子さんが圧倒的に多いです。
こういったお子さんへの対応方法としては、小さな自信をいくつも積み重ねさせてあげることで、「自分もやればできる」という気持ちを育ててあげることが大切です。
ところが、幼児期に「厳しく言われる」「強制させられる」ような関わりばかりをされていると、「やっぱりぼく(わたし)はできない」「自分には無理だ」という負の気持ちが大きくなってしまいます。
そういった経験を経て育った子どもは、「挑戦しない」だけではなく、「自分の殻に閉じこもる(引きこもる)」ようになります(これが引きこもりの要因となっていきます)。
子どもが自信をなくしていること自体は、幼児期の間には分かりづらいものですが、小学校の高学年などの時点で気付いたときには「すっかり自分に自信をなくしてしまった子ども」になってしまっています。
だからこそ、幼児期に将来を見据えた取り組みをするかどうかで、将来の方向性が大きく変わってくる、と言えるのです(スタッフは予測がついています)。
なお、今回の動画では、叱る療育が行われる理由を2つ挙げています。
一つは、「叱る」が伝播している状態。もう一つが「叱っていると、叱っている本人の脳内に快楽物質が出るから」です。
それぞれの理由の詳細は、動画をご覧ください。
上記の理由のいずれも、「子どもは犠牲者」です。
大切な我が子が、(理由はなんにせよ、誰かの)犠牲になることは避けさせてやりたいと思う方は、ぜひ参考になさってください。
ちなみに、ゆずに見学にお越しの保護者の方から「初めての場所なのに、すごく落ち着いている。楽しそう」と言われることがあります。
楽しすぎて「帰りたくない」と泣き出す子もいます(笑)。
だからといって、私たちが何かスペシャルなことをしているわけではありません(見学時、ですからね。特に何も手立てはしません)。
では、なぜお子さんは落ち着くのでしょうか。
それは、好きな感覚刺激を取り入れながら、お子さんの主体性が出せるような環境を設定しているからです(もちろんその子に合った刺激を選び、その子が落ち着く環境設定をします)。
それだけです。
それだけで、反応は変わります。
満足する刺激を入れながら、主体性を尊重しつつ、さりげなく遊びの中で誘導すると、たいてい上手くいきます。叱らなくても上手くいきます。
そのコツを知ればいいのですが、その大前提として「叱ってさせる」を止めないと効果はでません。
もし、厳しく接することで子どもは伸びる、と思っておられる方は、一度お子さんの好きな感覚刺激を適度に入れてあげ、そして一度主体性に任せてみてください。
反応が違うはずです。