夜明け前が一番暗い
ゆず代表の西村です。
「夜明け前が一番暗い」というイギリスの諺を知っていますか?
夜明前は、まだ夜です。
だから、まだ暗いです。それも、一番暗いのです。
もうすぐ夜が明けるのに、なぜ一番暗いのか。
それは、明るくなる直前だからです。
相対的に考えると、夜明けという「明るくなってきている」直前は、最も暗い状態といえます。
一番暗いということは、もうすぐ明るくなるということ
反対に考えてみましょう。
一番暗いということは、「やがて明るくなることが決まっている」と言えます。
明るくなる保証がなければ、「暗さがずっと続くだけ」だけです。
人の苦しみや悲しみも同じです。
苦しみが消えていく、悲しみが癒えていく直前だからこそ、最も辛く、悲しい気持ちが存在するのです。
逆説的に言うと、今とても苦しく、悲しいのなら、好転する兆しが、すでに見え隠れしているはずなのです。
だから、今解決できない悩みがあった時は、「とりあえず、今しばらくそのままにしておく」というのもいい方法です。
夜中に何かゴソゴソとするのではなく、朝までとりあえず寝る、という考え方です。
不安や悩みは、他者との関係から生まれる
必ず明けるという保証があるから、「夜」は存在します。「朝」があるから「夜」がある。
もし、一日中夜の世界だとしたら、朝だとか夜だとかいう表現はありません。
宇宙があるから、地球があり、他人がいるから自分がある。
アドラー心理学の創設者であるアルフレッド・アドラーは、「すべての悩みは、対人関係から生まれる」と語っています。
あなたがもし今、無人島にいるなら、と考えてみて下さい。
コミュニケーションの必要がないので、言葉はいりません。どんな行動をしようと自由です。夜中中歌っていようが、走り回っていようが、泣いていようが、何の問題もありません。
それと同じで、我が子の発達の不安も「他人との関係の中で生まれる」と考えてみてください。
◆他の子に比べて、我が子の発達が遅い
◆他の子はじっとできるのに、我が子はじっとできない
◆他の子は話せているのに、我が子はまだ言葉がでない
いくらでも不安は出てくると思います。
このように、我が子の発達の悩みも、他者(社会)との対比の中で生まれてきます。
他者に目を向けるのではなく、我が子に目を向けると、怖いものはなくなる
不安を解消するために最も良い方法は、他者に目を向けるのをやめることです。
我が子だけに目を向けるのが一番不安を消すことにつながります。
我が子に目を向けるというのは、何も「我が子を受容せよ」とか「障害を認めろ」と言っているのではありません。
そんなことは、実はどちらでもいいことなのです。
診断がついたところで、我が子は我が子で、何も変わりません。
また、「他人と比べるな」と言っているのでもありません。
「この子は、他の子と比べて、こういうところが苦手だ」「他の子がじっと座ることができるが、この子はじっと座るのが苦手だ」と捉えることは大切なことです。
違いを知ることは大事ですが、優劣をつけることは意味がありません。
親心として「このままでは、集団生活の中で困るのは、この子だ。だからどうにかしてあげないと」と焦る気持ちは分かります。
でも、「困る」と一番感じているのはお子さんでしょうか?
もしかして、お母さん・お父さんが「困る」(社会はそんなものだ)と感じているのではないでしょうか?
「この子のために」と思って、取り組ませていることが自体が、無言のプレッシャーとなって、お子さんを困らせることにならないでしょうか?
親は、我が子の一番の理解者であり、最後の砦です。
親は、他人目線で我が子を見てはいけないのです。
「世界中のみんなが間違っていると言っても、お母さんは(お父さんは)あなたの味方だから、安心して自分の思うように生きなさい」と声をかけ、その子が生き生きと輝いた人生を歩めるために、できることを考えてあげる存在です。
人が成長するのは、順風満帆な時ではなく、壁にぶつかった時
これまでの人生を振り返ってみてください。
「あの時、自分が成長したな」と思える出来事があると思います。
その成長した時は、順風満帆でしたか?
多分違うと思います。
壁にぶつかった時、限界を感じた時、夜も眠れないほど悩んだ時、絶望的に感じた時。
一所懸命に考えて、トライし、そうやって壁を乗り越えた時、自分自身の成長を感じたのではないでしょうか。
つまり、人が成長する時は、決まって壁にぶつかっている時なのです。
反対にいうと、今、大きな壁に直面しているなら、親としても成長する大きなチャンスが来ているのです。
我が子の発達が不安で、夜も眠れないほどの悩みを抱えているなら、それはお母さん・お父さん自身が今まで以上に成長するチャンスがそこまで来ている証拠なのです。
我が子に、成長するチャンスを与えてもらっているのかもしれません。
過去もなければ、未来もない。あるのは「今を一所懸命生きる」ことだけ
私は、ゆずの療育の根幹をなすこととして、次のような理念を掲げています。
「良い療育を提供するために大切なことは、スタッフ自身が楽しく働くことだ」と。
ゆずは保護者支援に最大の力を入れています。
その理由は、「親が変われば子どもは変わる」からです。これは紛れもない事実。
そして、保護者の方に楽しく子育てをしてもらうためには、ゆずのスタッフがまず楽しく働くこと、だと考えています。
スタッフが楽しく働く→保護者の方に「楽しい」が伝播する→保護者の「楽しい」がお子さんに伝播する
この流れがとても重要なのです。
子どもを楽しませる、というのが先にくると「スタッフは疲弊」し、保護者の方は「子どもの犠牲」になってしまいます。
それでは、三方良しにはなりません。
そんな療育は、息苦しく、苦痛でしかありません。
療育なんて、我慢するものではなく、根性で乗り越えるものでもなく、誰かの何かを犠牲にするものでもありません。
では何を大切にするべきでしょうか。
それは、「今、この瞬間を、楽しく生きる」ことです。
「今が良ければ、それでいいのか?!」というお声も聞こえてきそうですが、それでいいのです。
「あの時こうしておけばよかった」と思っても、過去には戻れません。
誰も過去を変えることはできません。
だから過去を悔やんでも意味がありません。
「将来こうなったら困るから」と思っても、予想通りになるかどうか分かりません。
10年前に、スマホが必需品になっていると想像できましたか?
だから未来を不安に思う必要はありません。
過去を後悔したり、未来を不安に思ったりするのは、いまさらどうしようもないことや、どうなるか分からないことに、時間や労力を使っているのです。
それよりも、そのエネルギーを「今を楽しく過ごす」ことに使ってみてはどうでしょうか。
今日がとても楽しいと 明日もきっと楽しくて
某歌姫の歌詞ですが、まさにこれです。
今日が楽しいなら、明日もきっと楽しいはずです。
楽しい明日を期待するなら、楽しい今日を作ればいいのです。
今を楽しむ、今日を丁寧に生きる。
未来は「今日の積み重ね」です。
明けない夜はない
最後にもう一つだけお伝えしておきます。
今、暗い夜道を歩いていると思うなら、こう考えてみてください。
「明けない夜は、ない」
世の中は動いています、状況も刻一刻と変わっています。
何も変わらないように思えるかも知れませんが、それは「夜明けまで、もう少し時間がかかる」だけです。
じゃあ、どうすればいいか。
不安なままでいいので、もう少しだけ歩き続けて下さい。今、楽しいと思えることを灯りに。
もう少し待てば、水平線にうっすらと、朝が来る兆しが見えてくるはずです。
明けない夜はありません。消えない悩みはありません。そのためには自分自身が動いていることです。
「ここ」から「向こう」へ歩き続けることです。
多くの人が理解してくれなくても、分かってくれる人は、必ずどこかにいます。
お子さんのこれからも、同じです。
理解してくれない人、心無いことを言う人もたくさんいると思います。
それでいいのです。
それが世の中だからです。
だから、分かってくれない人を罵ったり、嘆いたり、理解を得ようと努力したりする必要はありません。
なぜなら、どんなに理解を得ようと取り組んでみても、そんな人は絶対に理解なんてしてくれません。
そんな人のために貴重な時間を使うなんてもったいない。
その時間があるくらいなら、我が子をより理解するために時間を使ったほうがいいに決まっています。
発達のこと、療育のことを学んでください。
親が賢くなる。これも我が子に対して、親ができることです。
子育ての大変さをいたわってくれたり、子どもの良いところを見つけてくれたり、応援してくれたりする人は、必ずいます。
今、近くにいない、と感じていても、これから必ず現れます。
そのためには、親が凛としておくことです。
そうすれば、自然に味方が集まってきます。
人は、頑張っている人を応援したくなるものです。
ゆずの療育の本質は、「小さな灯りをそっと差し出す道案内」
ゆずのスタッフは、お母さん・お父さんとお子さんの足元に灯りをともす役割を担っています。
ゆずを運営している会社の名前は「ILLUMINATE」といいます。私が決めました。
暗い道を不安な気持ちで歩いている保護者の方とお子さんの足元に、小さな灯りをともす会社でありたい、と思ってつけた社名です。
ゆずのように小さな事業所は、明るい光を放つことはできません。麦球のようなものだと思います。
ネオンのような派手さや明るさはありません。
でも、漆黒の闇では、麦球ですら、道案内になります。そして、安心を生み出します。
私達は、療育を初めて受ける方や、療育に悩んでいる方へのバックアップを得意としています。
麦球は麦球として、プライドを持っています。
そして、夜が明けて、灯りが必要なくなれば、ゆずの役割は終わりです。
小学校に上がるまでに、夜が明けることを、そして次のステップに明るく立ち向かえる力をつけてもらえることを願いながら、毎日仕事をしています。
明けない夜は、ない。
やがて夜が明けます。
それまで、一緒に、暗い道を歩いていきましょう。
私たちは、小さな灯りを差し出しながら、お母さんやお父さんの隣を歩いています。