時々「理学療法士なのに、なぜ発達障害のお子さんを対象とした事業所を運営しているんですか?」と聞かれます。理由は2つ。
1.私自身が超不器用で、発達性協調運動障害の傾向があるため(こだわりの強さと落ち着きのなさも)。
2.発達障害児の運動課題に対応できる理学療法士が増えてほしいから。
— 西村 猛@日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士 (@seinosuke2013) May 15, 2019
意外に気付かれない、発達障害のあるお子さんの身体面の課題
発達障害のあるお子さんの多くは、身体的な課題も併せ持っていることが多々あります。
例えば、体幹筋の低緊張からくる姿勢の崩れ、筋肉をタイミングよく働かせることが苦手なことによる「すぐに転倒する」という問題、歩く時に足の裏が床にまっすぐに着かないことからくる足の関節の歪み、など、枚挙にいとまがありません。
しかし、その課題については、意外に気付かれないことが多いものです。
手先の不器用さはどなたにも分かりやすい問題ですが、体の使い方の不器用さはパッと見ただけでは分からないですよね。
また歩く時に、足の裏が真っ直ぐに着いているかどうかは、理学療法士なら分かりますが、保護者の方では判断が難しいところでしょう。
ゆずのおっちゃんは、理学療法士なので、肢体不自由のお子さんはもちろんのこと、自費の発達相談教室で発達障害のあるお子さんの体の評価とレッスンを行ってきました。
その経験から言えることですが、発達障害の診断が付く前のお子さんであっても、身体状況を見ることで「将来発達障害の診断が付きそうだ」ということは、分かります(臨床経験が豊富な理学療法士であれば案外簡単に分かるものなので、ゆずのおっちゃんがスゴイわけではないのです)。
理学療法士の方なら分かっていただけると思いますが、まだ言葉が出ない年齢(例えば1歳代)の子どもでも、「体の使い方や歩き方などを評価することで、『将来的に発達障害の診断がつきそうだなあ』と予測できる」ことが多々あります。低緊張やボディイメージ、身のこなしなどが指標になります。
— 西村 猛@日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士 (@seinosuke2013) May 16, 2019
そのため、ゆずにお越しの方であれば、もしお子さん身体面での課題があった場合、「将来発達障害の診断がつくかどうか」について、判断はたやすいです。
しかし、このように(一般的には)早い時期に理学療法士に体を診てもらう機会は少ないため、身体面の課題は気付かれないか、または「何かおかしいかな?」と気になりながらもそのままとなってしまうことが多くあります。
「病院で、体幹機能が弱いと言われた」ということで、お子さんのお体を簡単に評価してみたところ、「特に課題となるほどの問題はない」という事例もたまにあります。
「発達障害=体幹が弱い」というイメージが独り歩きしていることが多いのも問題です(正しくは「体幹が弱い人もいる」です)。
身体面の課題は、時間をかけて表面化してくる
例えば、足の裏がまっすぐ床につかない、という問題があったとします。
保護者の方が気付かないレベル程度であれば、すぐに問題が表面化してくるようなことはありません。
それ故に、問題が気付かれにくいという問題はありますが、少なくとも幼児期に、「痛くて歩けない」といったような悩みが起こることはありません。
しかし、足の裏が歪んで着くという歩き方に対して、手立てをしないまま大人になるまで(あるいは思春期を向かえる時期頃まで)過ごしてしまうとどうなるでしょう。
年齢とともに、体重が重くなるため、年々足首の関節の変形が進みます。
やがて、関節や筋肉が限界を向かえると、痛みが出てきます
この時に初めて足首の関節の変形が痛みを引き起こしていることに気づくことになるのですが、一旦生じた痛みを解決することは難しくなってしまっています。
身体的な課題について、定期的にチェックしてもらうことが大切
そうならないためには、幼児の時期から、定期的に足首の変形が進行していないか、を整形外科医や理学療法士にチェックしてもらい、変形が予測される場合には、変形予防の対処(例えば足底板-そくていばん-と呼ばれる靴の中敷きを入れるなど)を早期からしておくことが大切です。
備えあれば憂いなし、を幼児期から実践しておくことで、将来の痛みを予防する、将来起こりうる課題を予防する、という視点が大切です。
将来発達障害の診断がつくかもしれないお子さんに対して、理学療法士ができることは以下のようなことかと思います。
・体幹機能を整える。
・正しい座位姿勢を獲得させる。
・持久力と基礎体力を高める。
・体の柔軟性を維持する。
・保護者に予測される体の二次障害と、予防方法について説明する。 https://t.co/thJkgcFzQy— 西村 猛@日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士 (@seinosuke2013) May 17, 2019
また、発達障害のあるお子さんは、体力(特に持久力)が弱い傾向にあります。
これは、何かを集中して活動するのが難しいお子さんの場合、じっと座り続けるなどの持久力を高める活動の経験値が低いことに由来します。
こういった課題に対しては、理学療法士に定期的にアドバイスをもらいながら、経過を見守っていくのが良いでしょう。
さらに「体力が弱い=防衛体力も弱い」ということが言えます。
防衛体力は、自分自身を守る力のことです。
たとえば、ストレス耐性です。
周囲からのストレスに押しつぶされないためには、「ストレスに対する耐性をつけること(メンタルを強くすること)」が大切です。
方法は、純粋に「体力をつける」ことです。
【発達障害児の体力の弱さとストレス耐性】
・体力が弱い子は、防衛体力も弱いことが多い。
・防衛体力とは、自分の体や心を守るための力強さを指す(ストレスに対抗する力強さも含まれる)。
・体力と防衛体力はともに関連しあうので「体力を付ける=ストレス耐性を向上させる」ことにもつながる。— 西村 猛@日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士 (@seinosuke2013) May 19, 2019
もしお子さんが、外的ストレスに弱いなら、体力をつけるように、運動プログラムを実践するのが良いでしょう。
この場合も、体力向上プログラムに造詣が深い、理学療法士に相談することをオススメします。
発達支援ゆずでは、お子さんの体の課題・姿勢や運動面でのお困りごと・関節の変形や筋力低下などの心配ごとなどに対して、児童発達支援管理責任者で理学療法士のゆずのおっちゃんこと西村が、ご相談にお乗りしています。
発達支援ゆずをご利用いただいている方のみのサービスとなっていますので、一般の方は自費サービス事業の「発達相談室ゆず」へご相談ご利用ください。
まとめ
・発達障害のあるお子さんの多くは、身体面での課題も併せ持っていることが多くあります。
・しかし、現状の療育ではその課題に気付かれにくい傾向があります。
・身体面での課題や問題は、時間をかけて表面化してくることが多いため、「気付いたときには時すでに遅しになっている」ことがあります。
・子どものうちに手立てを考え、将来起こりうる問題を予防するためにも、運動の専門家である理学療法士に相談することが大切です。
・運動を通して、体力を向上させることは、メンタル面でのストレスを強くする効果もあります。この場合も、理学療法士に相談するのが良いでしょう。