こども発達LABO.のYouTube動画:「自閉スペクトラム症の基礎知識①〜発達障害と知的障害の2つの観点から特性が決まる〜」
こども発達LABO.のYouTubeチャンネルでは、このたび新しいシリーズ「自閉スペクトラム症の基礎知識」が始まりました。
これまで、YouTubeチャンネルでは、子どもの言葉や体の発達に関する情報、発達障害にまつわる知識、具体的な手立ての方法、などについてご紹介してきました。
また、ゆずのブログが元になった「療育のイロハ」も人気動画として、回を重ねてきました。
今回、王子公園ルームが開所したこともあり「自閉スペクトラム症について、もっと基礎的なことを学んでいただける動画シリーズ」を始めることになりました。
実はこのシリーズは、今年度ゆずに入社したスタッフへの職員研修がきっかけとなって始まりました。
これまで実施してきたゆずスタッフへの研修では、療育における知識、お子さんの評価の基礎となる医学的知識、具体的な評価手法、など専門性の高い内容の研修を行っていました。
5回の研修が終わった時点で、講師陣で話をしていた時に、ふと「そもそも発達障害の基礎って、きちんと理解できているだろうか」という疑問が出てきました。
専門性の高い研修も大事ですが、意外と「分かっているようで分かっていない」こともあるかもしれないため、基本的な内容もそれ以上に大事だったりするものです。
そのため、「一度スタッフに確認の意味も含めて、自閉スペクトラム症の基礎知識についての研修を行ってみよう」ということになり、言語聴覚士西村から1時間程度の講義を行いました。
研修内容は、発達障害の中でも最も多い、自閉スペクトラム症についての基礎知識です。
実は自閉スペクトラム症の特性については、思い込みや勘違いが多くあります。
思い込みの例としては、「言葉の遅れが併発する」「思ったことをすべて口に出してしまう」「目のコントロールに課題がある」「手先の不器用さがある」などです。
これらのことは、多くのお子さんで見られますが、だからといってみんなそうだと言うわけではありません。
勘違いの例としては、「軽度のほうが生活上の問題は少ない」「知的発達の遅れがあると、自閉症の特性が強く出る」などです。
軽度の方が生活上の問題は、一見少なそうに思うかもしれませんが、周囲になかなか理解してもらいづらく、また「本人のやる気がない」と一刀両断されてしまうことで、深く落ち込むお子さんもいたり、周りと併せていくことに苦痛を感じたりしているお子さんも多くいます。
その他には、発達障害の部分での遅れ(軽度・中等度・重度)と、知的発達の遅れ(軽度・中等度・重度)の違いが混同されていることが多くあります。
※スタッフ研修スライドより(無断転載したら罰金100万円)
発達障害の軽度や重度ということと、知的発達の軽度や重度は、全く別物です。
つまり、それぞれに「軽度・中等度・重度」があります(ボーダー領域もあります)。
そのため、お子さんの発達評価をする時には、「自閉症の部分」と「知的障害の部分」をそれぞれ評価しなければいけません。
ここを混同して捉えている方は、保護者の方のみならず、療育支援者にもおられます。
余談ですが、自閉スペクトラム症とADHDでも同じことが言えます。
自閉スペクトラム症とADHDは、はっきりと二分されることはなく、併発している(どちらの要素もある)ことがよくあります。
ところが、自閉スペクトラム症はこだわりが強い、ADHDは落ち着きがない、という単純な分類で理解している人も多いため、両方を併せ持っったお子さんの場合、より強く出ている特性(例えば多動が目立つとADHD)だけで判断されることもあります。
そのため、強く出ている特性ばかりが注目され、弱いながらも出ている特性に気付かれにくいという問題があります。
これも、保護者の方や療育支援者の思い込みや勘違いということになります。
こういったことから言えることは、「子どもの特性は、一人ひとり要因の組み合わせが違うため、個別の評価を確実に行うことが重要」ということです。
正しく評価してあげられないと、子どもに合った最適な手立てを考えることができないので、療育を受けている割にはあまり効果がない、といったことにもつながります。
そういったリスクを避けるためには、「保護者や療育スタッフが思い込みで子どもを見ないこと」「裏に隠れた別の特性などもしっかりと見抜いてあげること」「総合的な視点で手立てを考えてあげること」などが重要になります。
自閉スペクトラム症の診断名がついているお子さんは特に、「別の視点から評価」を行ってみることをお勧めします。
こども発達LABO.は、神戸市の療育センター(神戸市総合療育センター)に長年勤務したにしむらたけし (ゆず代表)と、知名度&実力ともに全国トップの療育センター(姫路市総合福祉通園センタールネス花北)に長年勤務したむぎちょこ(ゆずスーパーバイザー)が、根性論や根拠なき手法がまかり通る日本の療育を変革するために結成したグループです。
「医学的根拠を持った療育・厳しく躾けることなく子どもの主体性を引き出す療育・ホスピタリティを大切にした保護者支援の充実」などを理念に、YouTube動画やTwitterなどのSNSで発達障害に関する情報を発信したり、全国各地からの「お子さんの発達の不安」「療育支援者からの療育実践のお悩み」などに対して、オンラインでアドバイスを行ったり、全国の療育事業所やこども教室などのコンサルタント事業を行うなど、幅広く活動しています。
今後は、感覚統合療法において全国的に著名な作業療法士丸田千津(ゆず保育所等訪問支援事業スタッフ)もメンバーに参加し、療育に携わる理学療法士/作業療法士/言語聴覚士の育成も行っていくことになりました。
こども発達LABO.は、日本の療育を根拠あるものとし、子どもが「生きるって楽しい!」と感じ、保護者の方が「子育てって面白い!」と思えるよう、様々な活動を行ってまいります。
ぜひ応援してください!