発達障害児のための個別学習塾「寺子屋ゆず」2024年4月リニューアルOPEN!

「自分で発達する力」を引き出すことの大切さ〜ゆずを巣立った方へ、ありがとうとさようなら〜

Sくんの療育経験から感じたこと。「自分で発達する力」を引き出すことの大切さ

2021年3月31日、年長児さんたちが、ゆずのご利用を終え、小学校へと巣立っていきました。

上の写真は、その中の一人、Sくんとお姉さんがお別れの記念に作ってくださったゆずスタッフの似顔絵です。


Sくんは、お母さんと一緒に、時にはお姉さんやお父さんと一緒に、週2回のペースでずっと通ってくれました。

人なつっこいお子さんですが、敏感なところがあり、ご利用当初はできないことがあったりすると泣いてしまったりすることがありました。

また、他のお友達が、Sくんに強く向かってきた時も、不安感のためその場から逃げようとしてしまうこともありました。

 

スタッフは、評価を通して「Sくんがうまく行かない時に泣いたり、逃げたりしてしまうのは、『自分でどうすればよいかわからなくなるから』ではないか」と分析しました。

そのため、NCプログラムや言語聴覚療法の中で、Sくんのしたい遊びを通して成功体験を積み重ねることと、自分の気持ちを言葉で伝える経験を持つことを目標に、遊びプログラムを立案し、実践しました。

 

また同時に、お母様にSくんの現在の状況をお伝えし、お家での関わり方のポイントや今後の目標を共有し、ゆずとご家族が同じ方向を向いて療育を進めてきました。

お母様をはじめ、ご家族はゆずのスタッフからのお話を丁寧に実践してくださいました。

 

Sくんは、すこしずつ自分に自信を持つことができるようになり、困ったときや不安なときにその場から逃げてしまうのではなく、言葉でその気持を伝えられる機会が増えていきました。

そして、他のお友だちに対しても臆することなく、対等な立場でやり取りができるようになっていきました。

もともとサービス精神が旺盛で、人を笑わせたりすることが得意なお子さんでしたが、その技はさらに磨かれ、ギャグを言ったり変顔をしてみんなを和ませてくれるようになりました。

 

私たちがSくんの療育で最も気をつけたことは、「まずはSくんが否定されない環境を作る」ということでした。

当時、自分でどうすればいいか分からなくて泣いたり逃げたりしていたSくんに「頑張りなさい!」という方針で接していたら、どうなったでしょう。

Sくんは、もっと追い詰められて、自分の殻に閉じこもるか、破壊的になるか、の2つしかなかったと思います。

それよりも「ここは自分を理解してくれる場所だ」「思ったことを言っても、先生もお母さんも笑って理解してくれるんだ」という経験値を上げたことで、Sくんは自分の言葉や行動に自信を持てるようになり、やがて自分の力で成長していきました。

療育で矯正させたのではなく、「Sくんの持っている『自分で発達する力』を引き出した」だけなのです。

Sくんは自ら成長していったのです。

 

そして、Sくんが成長した陰には、もう一つ大切なことがありました。

それは、Sくんを大切に思い、穏やかにそして毎日の中で丁寧な関わりをしてくださったお母さんをはじめ、ご家族のご協力があったことです。

特にSくんにとっては、お母さんが楽しそうに笑っている様子が、何よりのエネルギーになったと思います。

「お母さんが笑って見守ってくれている、だから僕は前を向いていけるんだ」

そんな気持ちが、Sくんの中で次第に育っていったのだと考えています。

 

こんな風に自分に自信をつけたSくんは、小学校以後の人生において色々直面であろう困難にも、ご家族の力を借りて、自分で立ち向かっていってくれることと思います。

私たちの役割は就学とともに終わりますが、もしSくんが学校生活の中で困難に直面して、「助けてほしい」というヘルプサインをもらうことがあったら、学校訪問などを通して、Sくんにとって最良の方法を一緒に考えていきたいと思っています。

Sくんとお母様に

「Sくん、これからの人生で辛いことがあった時、あなたのそのユーモアセンスで、辛いことを笑い飛ばしてくださいね。あなたはその強さをもった男の子に成長しましたよ」

「お母さん、ずっと優しい笑顔でSくんを見守ってくれてありがとうございました。お母さんの笑顔は、Sくんにとって何よりの味方で、最後の砦です。これからも彼は人生において色々な困難に直面するでしょう。その時に立ち向かう勇気は『お母さんは僕の味方だ』という思いから生まれます。今まで通りの優しいお母さんでいてあげてくださいね」

Sくん以外にもたくさんのご家族が卒業されました

年長の1年で、ぐっと伸びたお子さんは、本当に大勢おられました。

皆さんに共通しているのは、子どもの主体性を尊重すること、そして時間をかけて子どもが成長するのを見守ること、でした。

年少や年中の時期に、結果を焦らずじっくりと子どもに向き合ったからこそ、その効果が年長になって表れてきたのです。

 

子育ては、時間がかかるものです。

答えが、10年後、15年後に出ることもたくさんあります

焦らずに、じっくりと時間をかけて親子の信頼関係を構築する、子どもが「自分はこれでいいんだ」と思える機会をたくさん作る、人から自分が必要とされている経験をたくさん積ませる、親は子どもの味方であることを言葉や行動で伝える。

こういった取り組みが、明るい未来を作ると私たちは考えて、日々実践しています。

これからも私たちは「我が子が愛しくなる療育」を提供していきたいと思います。

最後にゆずを卒業された保護者の方へ

今までゆずの療育を信頼してくださり、そして焦らずにゆっくりと子育てをしてくださってありがとうございました。

これまでの頑張りは、小学校に上がってから形になってくると思います。ぜひ楽しみにしてください。

 

そして、お子さんを信じて、これからも子育てを楽しんでください。

子育ては、辛いものではありません。楽しいものです。

ぜひそれを体いっぱいで感じてください。

 

それでも世間の風は冷たいこともあります。

不安なこともこれからたくさん出てくるでしょう。

 

そんな時は、いつでも私たちを頼ってください。

私たちは、ずっとここにいます。