4月より、常勤言語聴覚士として勤務してくれている、西村千織先生(通称むぎちょこ先生)に、ゆずでの勤務の感想や、言語聴覚療法について、今後の展開などについて、インタビューしました。
聞き手は、ゆず代表のゆずのおっちゃんこと西村猛です。
ゆずでの勤務はどうですか?
これまで公的療育機関に勤務されてきましたが、ゆずの療育を実践された印象を教えてください。
まず驚いたのは、ゆずの対応がすごくスピーディーなことです。
以前働いていた公的療育センターは、何かを決める時には何度も何度も会議を重ね、上司へ伺いを立てて最終決定されるといった具合だったので、なかなか決まらないことが多かったのです。
「対応スピードが早い」というのは、具体的にはどういうことでしょうか?
4月からの勤務後、早々にコロナウイルスの感染予防の為、外出自粛が始まり、オンラインレッスンへの準備に取り掛かることになりました。
その際、ゆずであっという間にオンラインレッスンを始めることになり、すぐにiPadが導入されました。
まず、これに驚きましたね(笑)。
私が「いらち」なだけかも知れないですが(笑)。
他に、ゆずで勤務してみて思ったこと、感想などがあれば教えてください。
窓から見える電車の数。踏切の音や電車が通過する音がよく聞こえます。
電車好きにはたまらないですよね。
なるほど、そこか!(笑)。
実は、この場所を契約する時に、不動産屋さんから「他にも発達支援事業所さんが見学に来られましたが、『電車が好きな子が集中できないから、ダメだ』と言われて契約されなかったらしい」ということを聞いたのですが、それについてはどう感じますか?
電車を眺めてすっきりして課題に戻ってくるお子さんがいたり、窓から一緒に電車を見ながら電車の話題に花が咲くこともあり、私はなかなか気に入ってます。
同感です。
「逆に電車好きなお子さんにしたら、たまらなく楽しい環境になるのでは?」と考えたんです。
集中できないから、ダメ、ではなく、「どうすれば、楽しくかつ集中できるかを考えるべきだ」と思ったんです。
そのこともあって、即契約しました(笑)。
私自身も、「楽しい!と思える療育が一番だな」と最近気付かされました。
φ(..)メモメモ(笑)
具体的に、どんなことに気付きましたか?
言語聴覚療法の提供のしかたです。
以前は完全個室の殺風景な部屋で個別セラピーを実施していましたが、今はいつでもどこでも遊べる環境での言語聴覚療法にチャレンジしています。
セラピストにとって、実はゆず式の方が難しいのですが、その分、効果を引き出すことにつながると感じています。
ゆずでは、堅苦しいお稽古のようなレッスンは、原則禁止ですからね。
「遊びの中で、効果を引き出すレッスン」こそが、一番効果がある療育だと思います。
その分、スタッフは大変だと思いますが、みんな一所懸命に取り組んでくれています。
公的療育機関にずっといたら、「遊びの中で、効果を出す」ことに気付かないままだったと思います。
公的機関は、おふざけ禁止!な雰囲気がありますからね。
だから私は役所時代、浮きまくりでした(笑)。
公的療育機関では、「他のモノが目に入らない整理された個室空間」「療育機関という特殊な環境が、自分のフィールド」など、セラピストとしては働きやすい環境が揃っています。
その反面お子さんや保護者の方にとっては、しんどい空間だったのかな、と思います。
お子さんや保護者の方にとって、「しんどい空間」というのは、面白い発想ですね。
保育所訪問を実践して感じたことなのですが、「子どもの普段の生活の場にこそ、子どもの発達を促す要素がたくさんある」ということに気付きました。
「セラピストが、子どもへ直接関わることでしか子どもを発達させることができないというわけではない」ということです。
だからこそ、セラピーの場は、隔離された部屋よりも、子どもの生活の場であるべきだと思います。
なるほど。
ゆずでは、子どもを矯正させるような取り組みはご法度で、「遊びの中でプログラムを最適化する」ことを実践しているのですが、それと同じですか?
そうですね。同じだと思います。
言語聴覚療法とは?
言語聴覚療法というと、絵カードを見せて、「はい。りんごっていってごらん?りんご!」という練習をしているイメージをお持ちの方も多いと思いますが、実際はどうなのでしょう?
良くそう言われますが、そうではないです(笑)
例えば、言葉が出ないお子さんには、まずきちんと言葉の発達段階について、評価をする必要があります。
ゆずでは、評価に始まり、評価で終わるが大前提です。
武道の「挨拶に始まり、挨拶で終わる」みたいですね(笑)。
ちぇすとー!!!
薩摩示現流ですか?(笑)
詳しいですね(笑)。
言葉が出ないお子さんの場合の評価って、どんなことをするのですか?
まずは、どのくらい言葉を理解しているか、ということを評価します。
言葉の理解がまだ進んでいないのに、喋らせる練習をしても、効果的ではないからです。
生後半年の赤ちゃんに立つ練習をさせても、意味がない、というのと同じですか?
多分、同じだと思います(笑)。
評価の結果、「まだ言葉の練習をする段階ではない」と判断された場合は、どんな取り組みをするのでしょうか。
お子さんに「伝えたい気持ちがあるかどうか」「保護者や先生の言っている意味が分かっているのかどうか」などを見極め、これらのことがまだ難しい場合は、体を使った遊びややり取りをする中で、「伝わる面白さ」を学べるようにしていきます。
1歳になっても歩けないお子さんを、いきなり歩く練習をさせるのではなく、足の筋力が育っているか、バランス能力はどうか、歩きたいという好奇心は育っているのか、など見ていくのと同じでしょうか?
運動発達の専門ではないので、分かりません(笑)。
でも、多分同じだと思います(笑)。
今のお子さんの言葉の発達状況がどこにあるのか、課題は何か、遊びの中で何を取り組めばいいのか、を考えながら実践していく、ということで合ってますか?
それで、OKです!(笑)
今後の展開や想いについて
今後、言語聴覚士としてゆずでやってみたいこと、想いなどについて教えてください。
やってみたいことは、はじめにもお話したように、「遊びの中で言葉やコミュニケーション力を伸ばす言語聴覚療法の実践」をやっていきたいと思います。
小児言語聴覚療法に携わるセラピストは、全国でも少ないですが、さらに「遊びを通して効果を引き出す言語聴覚療法」を実践している方は、本当に数少ないと思います。
先例が少ない分、大変だと思いますが、だからこそやりがいがあるな、と感じています。
自分に厳しいですね(笑)。
自分に甘すぎる私は、耳が痛くなってきたので、このインタビューもそろそろ終わりにしたいと思います(笑)。
最後に一言、お願いします。
いつも時間の最後にたっぷり汗をかきながら、思いっきり遊んでいるお子さんの姿を見ると、ゆずはお子さんにとってとても楽しく安心できる場所なんだなあと思います。
また、保護者の皆さんもとても熱心な方ばかりで、お子さんの素敵なところをたくさん教えてくださいます。
その素敵なところ、得意とするところをどんどん伸ばしていいけるように、言語聴覚療法の観点から、お手伝いができればいいなと思っています。
できないことの指摘なら、誰だってできますからね。
ぜひ、子どもの可能性を引き出す言語聴覚療法を実践していただければと思います。
今日は、長時間、ありがとうございました。
ありがとうございました。