レッテル効果と言う言葉を知っていますか?
例えば「あなたは◯◯な人だよね」といったことを会話の中で話すこともあると思いますが、これがレッテルを貼るという行為です。
そのレッテルによって周りの人が「この人って◯◯な人なんだ」と思うようになりますが、このことをレッテル効果と言います。
もちろん貼られた人自身も、私ってそうなのかな、と思ってしまうこともあります。
このレッテル効果には、マイナスに作用することと、プラスに作用する2つの効果がありますが、一般的に多く見られるのは、マイナスに作用するレッテル貼り(ネガティブなレッテル)です。
子育てや療育におけるマイナスに作用するレッテル効果は「この子は、人の話が聞けない子だ」や「椅子にじっと座れない、我慢が足りない子だ」などです。
こういった言葉は、 子どもの「問題」として表現されていることが圧倒的に多いです。
「人の話が聞けない子=学校にあがったら先生の話を聞けないから困るぞ」「椅子にじっと座れない=学校で授業中立ち歩くぞ」といった決めつけにもつながっていきます。
こういったレッテルを貼ることで、貼った人は「子どものことをよく見ている」「子どもの問題を見抜いている」と思われがちです。
ですが、子どもに限らず、人は一側面だけを捉えて表現することはできないはずです。
「人の話が聞けない」といっても、それは「何かに集中しているとき、集中して思考しているとき」限定の話かもしれません。
そういったことを思考せずに、大人が話しかけた時に聞いていなかっただけで「この子は人の話を聞く気がない」とレッテルを貼る人もいます。
もしそれが、療育事業所で担当の先生から言われると、保護者の方の中にはその言葉を鵜呑みにしてしまい、「厳しく躾けなきゃ」と思ってしまうという負のループに陥ることもあるかもしれません。
ネガティブなレッテルは他人が貼るもの
もし、療育でこんなネガティブなレッテルを貼られてしまった場合、親も一緒になって「この子はそうなんだ」と思ってはいけません。
そもそもネガティブなレッテルは、他人が「勝手に」貼るものです。
勝手に、という表現をしているのは、レッテルを貼ってそれで満足しているからです。
本来は、人の話を聞けないという現象があった場合、どこに原因があるのか?をセットで考える必要があります。
「過集中があるので、大人が話しかけても聴覚刺激として入っていないから」とか「どのように返事をすればいいか、頭の中で一所懸命考えている最中だから」など、聞けない理由が必ずあります。
そういったことを考慮せず、現象だけを見て「聞く気がない」とレッテルを貼っているなら、それは勝手にそう思っているだけなのです。
つまり、こういった説明がないのなら、このレッテルは他人が自己満足的に貼っているものなので、親としてはそれを鵜呑みにする必要はないのです。
ネガティブなレッテルは、子どもの自尊心や自己評価を傷つけます
このようにネガティブなレッテルを貼られた子どもは、「自分はダメなんだ」と思い、自信をどんどんなくしていくでしょう。
特に発達特性のあるお子さんは、一般的に「自分に自信がない」「失敗がとても怖い」というタイプの方が多いです。
また、大人の評価(している話し声)などを「聞いていないようで、敏感に聞いている」こともしばしばです。
例えば療育先で、保護者の方と先生が「この子は我慢ができない子です」「学校に上がったら困ります」などと話していることを聞けば、たとえ言葉の理解が少なくても、声のトーンや保護者や先生の表情などから察知し、不安になっていきます。
子どもを不安な気持ちにさせれば、伸びるものも伸びません。
人の話を聞けないことよりも、そうやって自信をなくしてしまうことのほうが学校に上がったら(大人になってからも)困ることなのです。
つまり、ネガティブなレッテルを貼るということは、子どもの人生にも悪影響を及ぼすことになります。
親は他人が貼った我が子のネガティブなレッテルを取り除く(我が子を守ってあげる)役割がある
上でも述べたように、他者は、我が子に対してネガティブなレッテルを勝手に貼ることが多々あります。誤解も含めて。
だからこそ、保護者の方は、他人が貼った我が子のレッテルを取り除いてあげる役割があります。
具体的に言うと、問題だと言われていることについて、他の側面から見てみることです。
椅子からすぐに離席して、机上課題が続けられないという問題は、「低緊張で持久力が低いからかもしれない」「視覚優位なので、目に入ったものが気になってしまうからかもしれない」などです。
低緊張で持久力が低いなら、持久力を高める取り組み(筋トレとか運動療育ではないです)をしていくことで、変化させることができるでしょう。
視覚優位であるなら、周りに刺激が入らないようにシンプルな環境で課題に向かわせると、集中しやすくなるでしょう。
貼られたレッテルを鵜呑みにするのではなく、「何か理由があってのことではないか?」といった疑いを持って現象を見てみる、ということこそ親が果たすべき役割です。
もうひとつ分かりやすい例で言います。
例えば、ある高校生が万引きをしたとします。
それ自体は許されることではありませんし、社会的な責任を高校生なりに追わなければなりません。
ですが、「万引きするに至った理由があるのでは?」と親なら考えるでしょう。
親の愛情が欲しくて、万引きすれば親が自分を心配してくれるかも、と考えてのことかもしれません。
誰かに無理やりさせられたのかもしれません。
そうかどうかはわかりませんが、とにかく色々な理由(原因)を考えることをするでしょう。
そう考えること自体が、「親として我が子を守っている」ということにつながっていきます。
つまり、他者が貼ったレッテルをそのまま信じて、その他者と同じ目線で我が子を見るという行為は、我が子を守ろうとしているのではなく、むしろ我が子を追い込んでいる行為である、と言えます。
親は、ポジティブなレッテルを貼ってあげよう
保護者の方ができることは、我が子に対してポジティブなレッテルを貼ってあげることです。
たとえ他者から否定的な評価を受けようとも、親は同調することなく、我が子の良いところを見つけ、そこにポジティブなレッテルを貼ってあげるようにしましょう。
そして、子どもの自己評価を向上させてあげ、小さくてもいいので自分への自信を持たせてあげることです。
親は、子どもにとっての安全地帯です。
お母さん、お父さんは、最後の砦です。
保護者の方が味方にならなくて、一体誰が味方になってくれるでしょうか。
みんなと同じだと良い、みんなと違うとダメ。だからみんなと同じことができないこの子はだめ。
同調圧力は、日本の社会では多くあります。
お子さんのできないことを「この子が将来困るから」といった一見それらしく聞こえる偽正義の言葉でネガティブなレッテルを貼られることもあるでしょう。
だからこそ、親は子どもが自分に自信を持てるように、同調圧力の世の中でも颯爽と生き抜いていけるように、「ネガティブなレッテルをスルーする力」をつけてあげることが大切です。
そのためには、常にポジティブなレッテルを貼ってあげることで、子どもの自尊心を守ってあげることが大切です。
誤解されがちなゆずの療育と、療育を成功させる保護者の特徴
ゆずの療育は、一般的には「問題行動」と言われる現象を「お子さんが悪いのではなく、お子さんからのヘルプサイン」と捉え、その原因(お子さんが困っていること)を発達評価に基づき考察します。
そして自分に自信を持たせる活動を取り入れながら、困り感をなくしていくという取り組みをしています。
そのため、好きな遊びを主軸にプログラムを展開していますが、保護者の方によっては「単に遊んでいるだけ」「放任主義?」といった印象を持つ方もおられるかもしれませんが、それは違います。
この子は◯◯ができない。それはこの子が将来困るから、◯◯ができるようにさせないといけない。
そんな進め方では、絶対に困りごとは解決しない、ということを私達は知っています。
まずは、子どもに安心できる環境を提示する、その中で自分に自信を持てる取り組みをする、という流れが大事です。
それが整ってからはじめて「苦手なことにも挑戦してみよう」という勇気が湧いてきます。
そういった基礎固めを行わず、いきなり苦手なことを繰り返しさせる、という方法を取っても、絶対に失敗します。
だからこそ、ゆずでは、ポジティブなレッテルを貼るための評価を行い、そこへの取り組みからはじめているのです。
ツボを押さえるように、療育に即効性を求めてはいけません。
そもそも子どもは長い時間をかけて育っていきます。
「◯◯ができないので、できるように練習させてください」というのは、「肩こりが一発で取れるツボを教えてください」と言っているのと同じです。
そのときは効果があったように思えますが、すぐに肩こりは再発します。
我が子のことを深く理解し、短期目標と長期目標を見据え、じっくりと丁寧にお子さんとお子さんの特性に向き合う。
工夫することを忘れない。
小さな変化を見つけたらすぐに次の課題に移るのではなく、その小さな変化を喜ぶ。
悩んだら、これまでの軌跡を振り返る。
お子さんの中にある「良いところ」を見つけてあげる。
ネガティブなレッテルを貼られた我が子に、ポジティブなレッテルを貼り直してあげる。
そしていつも我が子の味方でいる。
これが、私たちが日々の療育実践の中で実感してきた「療育を成功させる保護者の特徴」です。
【ご参考】療育支援者向けにお話した動画ですが、保護者の方もどうぞご覧ください。