こんにちは。ゆずのおっちゃんこと、代表のにしむらたけしです。
さて、私は子どもの姿勢についての専門家として「子どもと姿勢研究所」というのを2013年から運営しています。
その中で、子どもの姿勢が悪くなる原因と、対策についてWEBサイトや講義活動を通して発信しているのですが、今年度に入ってから講義依頼やメディアからの取材依頼がグンと増えてきた印象があります。
取材記事などは、また別途まとめてご紹介したいと思います。
「子どもの姿勢が悪くなったが、理由と手立てを教えてほしい」というご質問や講義依頼内容が多いのですが、一つの理由として「コロナの影響で子どもたちの体の課題が増えてきているからでは?」という感があります(雑感ですけどね)。
いわゆる外出機会の激減、という理由です。
ですが、コロナだけの問題ではありません。
コロナ騒動の前からも取材や講義で「椅子に座っていると足を上げた姿勢で座る」「椅子の上であぐらをかく」「背もたれに腕を引っ掛けるようにして座る」といったことから、「椅子から降りてすぐに床に寝転ぶ」といったお悩みを伺っていたからです。
この理由について「気持ちの問題なのでしょうか?」とお尋ねされることがあります。
ちゃんと座る気がないからですか?と言うことですね。
反対に言うと、「気持ちの問題なら、言って聞かせた方がいいですよね?」ということですね。
その時に私がいつもお答えするのは、「気持ちとかは全く関係ないです」です。
「実は、この理由は持久力の低下です。そして、持久力の低下は単なる運動不足以外に、低緊張が原因になっていることが多いです」とお答えします。
最近は、一般的に低緊張気味あるいは明らかに低緊張のお子さん(大人でも)が増えてきている実感があり、低緊張タイプのお子さんは「運動が苦手」「持久力が育ちにくい」「(成功体験が少なく)自分に自信がない」といった特徴があることが多いです。
特に発達特性のあるお子さんにおいては、定型発達のお子さん以上に低緊張である割合は高く、運動課題がベースになり言葉の遅れや認知の弱さにつながっている事例が多く見られます。
ところが、一般の保育園や学校はもとより、療育現場においても、この運動課題はあまり重視されることがありません。
療育プログラムにおいても「積極的に運動をして、体幹を鍛えましょう」などという手法がまかり通っていたりします。
運動発達のプロとしては、「低緊張のお子さんに対して、積極的に運動させるの?マジで?」と思いますが、気にせず通う方もおられるので、まあビジネスとして成り立っているのでしょう(儲かりゃいい、という事業所さんも世の中にはたくさんありますので、それはそれで「美味いやり方」です)。
余談ですが、言葉の遅れと同時に運動発達の課題(遅れ)がある場合、まずは運動発達の課題に取り組む必要があります。
感覚統合を含め、言葉の育ちの基礎(特に運動発達面)が育っていないのに、言葉の練習をさせたところで言葉は出ません。
お時間がある方は、下記動画をご参照ください。
言語聴覚士むぎちょこも、「言葉の遅れがあるからといって、言葉を教えても何の意味もない」とYouTubeでいつもお話していると思います(体の発達を促す、知っている言葉を増やす、伝えたい気持ちを育てる、言葉以外の方法でも「伝わった」という成功体験を増やす、などです)。
ですが、言葉の遅れがまさか運動発達の遅れから来ているとは気付かず、明らかに運動発達の課題があるのに、その部分にアプローチ(手立て構築)をせず、「言葉のレッスン」に躍起になっている事例も多く目にします。
おっと、いつもの悪いクセで話題が逸れてきた・・・。この話はまた別で。
閑話休題。
さて、低緊張で持久力が弱いお子さん(特に自閉症など特性のあるお子さんであればなおさら)に対して、積極的に運動をさせるとどうなると思いますか?
疲労が蓄積することで、睡眠リズムが崩れ、日中の無気力またはイライラ増強、膝や腰の痛みが出現など、色々問題が出てきます。
また、強制されることで、怒り爆発タイプになるお子さんもいれば、反対に自己発信をやめてしまうお子さんも。
厳しく叱りつけて言うことを聞かせる療育を受けて「落ち着いた!」と喜んでいる事例の多くは、子どもが怖いから自己発信を止めてしまっているだけだった、ということがありますが、それと同じですね(幼児期に間違った療育を受けると、小学校高学年頃になると悪影響が出てきたりします。これを二次障害と言います)。
ということで、低緊張のお子さんに積極的に運動させるのは、「百害あって一利なし」です。
百害のポイントは、「積極的に」運動させること、です。
その子に合った程度の運動を、子どもに運動と気付かせずに行うことができれば、効果を引き出せます。
え?ちょっとまって!?
うちの子の程度にあった運動とは、何?
運動と気付かせずに行うって、何するの?
と思いましたか?
良い疑問です笑
答えは「適切に評価してもらえば程度も取り組み方法も分かる」です。
要は、その子によって課題も手立ても違うので、十把一絡げ、みんなで一緒、なことをしていても意味がないので、「我が子はどうなのか?」について、正しく評価をしてもらってください、ということです。
つまり、例えば運動療育に行くとしたら、いきなり運動プログラムが決まっているようなところは、止めておいたほうがいいですね。担当の方が評価できないから、みんな同じことをするという流れになっているのです。
で、評価してもらえるのかどうかを見学時に見分ける方法があります。
まずは、理学療法士さんや作業療法士さんがおられる(評価してもらえる)事業所さんなら、プロの運動療育ですから、受けて吉。
もし、理学療法士さんなどの国家資格を持ったスタッフさんがいない事業所さんの場合は、見学時に「うちの子の運動課題はどのようなところですか?」と聞いてみてください。そのときに納得がいく答えをくれるところであれば、個別評価をしてくれていると考えて良いでしょう。
ただし注意点が一つあります。
「体幹が弱いので、体幹を鍛えると、姿勢が安定します。なので体幹強化を目指した運動プログラムを取り入れています」といったお答えがあった時は要注意。
それ、ただの常套句で、どなたにも言っているという確率が高いです。
世の中、とにかく姿勢が悪いと「体幹を鍛える」に終始することが多いのです。
だから、「とりあえずそう言っておけば、突っ込まれることもないから、それで煙に巻く」といったあたりでしょう。
多くの保護者の方が、「体幹が弱いので、体幹を鍛えますね」と言われると納得してしまいますよね。
別に間違っている理論ではないですからね。
それを逆手に、うまくごまかしている、というわけです。
なので、こういったお答え(方針)を言うということは、素人がやっている運動療育です。
以上が素人の療育とプロの療育を見分けるポイントです。
まあそうは言っても事業所オーナーさんからすると、「正しく評価できるスタッフを集められるのか?スキルを高めるための教育ができるのか?」と言いたいところでしょう。実際に、スタッフの質がバラバラだと、どこを基準に教育を行えばいいのか悩みどころだと思います。
そういえば思いだした。
以前運動療育を全国的に展開している事業所さんから、「療育の質を高めるための自社の基準やプログラムを構築したいと思っているが、ご相談できませんか?」と打診いただいたことがありました。
全国展開している事業所さんでも、というか全国展開しているからこそ、スタッフの質やサービスの質の平均化に苦労しているということがよく分かります。
たくさんの事業所がある→多くのスタッフをたくさん採用する必要がある→入職するスタッフの質がバラバラでとんでもない人も採用せざるを得ない→教育が間に合わない→質が上がらない
こんなループに陥ることもしばしばです。
ゆずだって、人ごとではありません。
一時期人が急に増えたことで、ゆずの理念が崩れそうになり、質の低下が危ぶまれた時期がありました。
お局様(第二形態)の台頭、ゆずの理念そっちのけの療育手法、その他諸々。色々赤裸々なお話になりそうなので、この辺にしておくね。
え?聞きたいですか?笑
また別の記事で書きますので、またこのブログに読みにきてくださいね笑
出た!ブログの再訪を促すセコい手法!!「答えはCMの後で!」戦法!
爆笑やな。さほど爆笑でもない。笑
閑話休題。
さて、この記事も長くなったので、今回お伝えしたかったことを以下にまとめてみます。
- 姿勢が悪いからといって、体幹を鍛える運動をしてもさほど効果はない。
- お子さんに合ってない運動を実践すればするほど、状況は悪くなる。
- 低緊張がある場合、積極的な運動は控え、みんな同じプログラムをするような運動療育は控える(理学療法士や作業療法士が担当してくれたり、個別に評価してお子さんの現状に合わせたプログラムを実施してくれる事業所さんならむしろオススメ)。
- 言葉の遅れや認知面での課題があるお子さんの場合、「運動発達の課題がこれらの遅れの原因になっていないか」についてチェックしておく。
- もし言葉の遅れの原因が運動課題に由来している場合、まずは運動課題に対する取り組みを行う。それをスルーして言葉の練習をしても言葉は出ない。SSTなども効果的ではない。
なお、ゆずをご利用の方においては、もし心配事があれば担当スタッフを通してお尋ねください。お子さんの状況をチェックしに伺います。
加えて、動画やオンラインを活用した発達評価とアドバイス(自費のオンラインサービスで実施している方法)をゆずをご利用の方(ご希望の方)限定で行っていきたいと考えていますので、正式アナウンスまでしばらくお待ちくださいね。
今後も講師活動や取材をお受けする中で、世の中の多くの方に運動発達や姿勢発達に関する「正しい知識」を持っていただけるように尽力していきたいと思っています。