
こんにちは。ゆずグループ代表の西村猛(理学療法士)です。
今回は、「子どもに厳しくする療育が、子どもの脳や自己肯定感の発達に悪影響を及ぼす理由」について、医学的研究を踏まえてご紹介します。
「この子のためを思って、厳しくしています。」
療育や発達支援の現場で、そうのように話す療育スタッフに出会われたことはありますか?
怒鳴る。罰を与える。できるまでやらせる。泣いても続ける。
実はそれは、悪意からではないことがほとんどです。
それどころか「この子の将来のために」という、まじめな動機から行われていることも少なくありません。
そして一方で、
「もっと厳しくしてください」
「泣いてでもやらせてほしい」
と、厳しい関わりを求める保護者の方もいます。
どちらも心の中にあるのは「この子に将来困ってほしくない」という思いです。
その気持ち自体は、決して間違っていません。
ただ、ここで間違っていると指摘したいのは、こうした「厳しく躾ける療育」が(療育スタッフが行う場合も、保護者が求める場合も)子どもの心に深刻なダメージを与える間違った考え方である、ということです。
「厳しく躾ける療育」とは何か
ここでいう「厳しく躾ける療育」とは、次のような関わりを指します。
- できないと強く叱る・怒鳴る
- 罰やペナルティ(おもちゃを取り上げる、無視するなど)を頻繁に使う
- 「そんなこともできない子はいらない」「いい子じゃないね」など、存在を否定する言葉を使う
- 子どもが“怖さ”から従っている状態を「できた」とみなす
一見すると「きちんと教えている」「将来のために厳しくしている」ように見えるかもしれません。
しかし、医学・心理学の研究から見ると、この方針は間違っていると言わざるを得ません。
研究が教えてくれる「厳しいしつけ」の結末
海外では、「厳しい養育」「厳罰的なしつけ」に関する研究が数多く行われています。
そこから見えてくるのは、「厳しくすれば子どもが伸びる」というイメージとは、正反対のものです。
複数の追跡研究において、体罰や怒鳴り、脅しといった関わりを多く受けた子どもほど、
- 感情をうまくコントロールできない
- 些細なことで爆発したり、攻撃的になりやすい
- 反抗的な行動やトラブルが増えやすい
といった傾向が報告されています。
その場では静かになり、「言うことを聞いた」ように見えても、心の中では怒りや不安が蓄積され、脳の中で整理できなくなっていくのです。
さらに大規模な研究では、幼児期から学童期にかけて「敵対的で厳しい養育」を受けた子どもほど、
- 不安や抑うつ症状が強くなる
- メンタルヘルス上のリスクが高まる
ことも示されています。
日本においても、体罰や暴言が脳の発達や自己肯定感に悪影響を与えることが、繰り返し指摘されています。
「お尻を叩く程度なら大丈夫」と考えられがちなレベルであっても、ストレス反応や感情の安定にマイナスの影響が出ることが分かってきています。
これらの知見を踏まえると、「厳しく躾ければ、この子はしっかりする」という直感は、正しくない判断です。
むしろ厳しくすること自体が、お子さんの感情のコントロールを難しくし、不安や抑うつ、自己肯定感の低下といった形で、
子どもの心を折り続けていくことにつながるという、とてもリスキーな関わり方なのです。
それを「療育」で行うことの怖さ
発達特性のある子どもたちは、もともと「感情が不安定になりやすい」「環境の変化や刺激に敏感」「言葉にできないもどかしさを抱えやすい」といった特徴を持つことがあります。
つまり、「ただでさえがんばって生きている」状態にあるのです。
そんな子どもたちが、療育の場で「できないことを強く叱られる」「失敗のたびに罰を与えられる「『「またできていない』『いい子じゃない』と否定される」という経験を重ねたとしたら、どうなるでしょうか。
「どうせ自分は怒られる」
「自分はダメな子だ」
「ここにいると、いつも不安で苦しい」
本来いちばん安心できるはずの場所が、「怖い場所」「自分を否定される場所」になってしまいます。
そして、もう一つの怖さがあります。
支援者が「この子のために」と語ると、保護者の方はそれを信じてしまいやすくなります。
子どもは傷ついていても、うまく言葉にできないことも多々あります。
そうするとその保護者の方は、「療育とはこういうものなのかもしれない」と受け入れられ、問題が表に出ないまま続いてしまうことがあります。
これは子どもが「被害を被る」だけではありません。「この子のためになる療育を受けている」と信じていた保護者も、知らないうちにその流れに巻き込まれてしまうのです。
これが、「厳しいしつけを行う療育」の、最も怖い部分(闇)です。
ゆずの療育が「厳しい療育」を否定する理由
国内外の研究や公的ガイドラインは、共通して以下のように定義しています。
罰や恐怖によって行動をコントロールする方法は、効果的ではないだけでなく、発達に悪影響を与える。
ゆずの療育は、この観点から「厳しく躾ける療育」を医学的に否定しています。
担当者が行う場合も、保護者が求める場合も同様です。
どちらも、子どもの発達にとってプラスにならないと考えています。
私たちが目指すのは、「怖いから従う子に仕立てること」ではなく、「自分でやってみようと思える子を育てること」です。
そのために、ゆずの療育では
- 安心できる環境を整える
- 特性に合った方法で「できた」を積み重ねる
- 失敗しても人格を否定せず、「次どうしようか」を一緒に考える
ことを大切にしています。
【重要】ゆずの療育が合わない可能性のある方へ
あえてはっきりお伝えします。
もし、「厳しく叱ってでも言うことを聞かせてほしい」「泣いてでもできるまでやらせてほしい」といった関わりを療育に強く求めておられる場合、ゆずの療育はそのご期待にはお応えできません。
私は医学的根拠を元に仕事をしてきましたので、医学的に間違っていることを、いくら保護者の方のご希望とはいえ、それは聞けません。
ゆずでは、罰や恐怖で子どもを動かす方法はとりません。
「怖いからする」ではなく、「分かったからできる」「やってみたいからする」というプロセスを重視します
そのため、「短期間で言うことを聞かせたい」という価値観の方には、ゆずの療育は合わないと考えています。
一方で、「時間がかかっても心の土台を大切にしたい」「安心の中で育ってほしい」と考えておられる方にとっては、ゆずが一緒に歩んでいける場所になると考えています。
幸いなことに現在は、たくさんの療育事業所ができています。
中には、厳しく躾けましょうという事業所さんもあると思います。
そういう意味では、療育もマッチングなのだと思っています。
もちろん、私たちを頼ってくださった方には、信じてよかったと言っていただけるよう、ホスピタリティと医学的根拠の両方を大切にしながら、一緒に悩みながら最適解を見つけるお手伝いをしていきます。
おわりに
療育は、子どもの「できない」を責める場所ではありません。
「できる」に向かって、安心しながら歩んでいく場所です。
もし今、お子さんが通っている場所で、怒鳴られている・泣かされている・怖がっているといった状況が続いているのであれば、手を差し伸べてあげてください。
我が子を助けてあげられるのは、親御さんなのですから。
心を鬼にしなくても、上手くいく方法は必ず見つかります。
それを見つけるのが、療育のプロです。
お母さん・お父さんは、難しい顔をして我が子を見るのではなく、お子さんが振り返った時「ニコッ」と微笑みかける「安全地帯」でいてあげてください。
それがお子さんの勇気になっていきます。
お子さんが安心して「またやってみよう」と思える方法を、一緒に探していきましょう。
いつでも私たちを頼ってください。
- 日本小児科学会「体罰とその予防」
体罰にはしつけとしての効果がなく、むしろ子どもの攻撃性・問題行動・メンタルヘルス悪化と関連することを、海外の縦断研究やメタ分析を含めて整理した資料。 - 厚生労働省「子どもの体やこころを傷つける 罰のない社会を目指して」
体罰や暴言が、子どもの脳の発達(前頭前野など)や自己肯定感、感情の安定に悪影響を与えることを、友田明美氏らの脳画像研究などにもとづいて解説したパンフレット。 - 厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」資料
体罰等が「感情的にキレやすく攻撃性が強くなる」「周囲を傷つける反社会的行動が増える」など、子どもの行動・メンタルに有害であることをまとめた検討会資料。 - 日本弁護士連合会パンフレット「子どもがすこやかに育つ、虐待のない社会を実現するために」
体罰を受けた子どもは攻撃性・反社会的行動・精神疾患リスクが高まること、体罰が道徳観念の内面化を妨げることを、国際的なメタ分析にもとづいて紹介している資料。 - Chang et al. “Harsh Parenting in Relation to Child Emotion Regulation and Aggression” ほか海外の縦断研究・メタ分析
厳しいしつけ(体罰・怒鳴り・脅しなど)が、子どもの感情コントロールの難しさや攻撃性・反抗的行動の増加と関連することを示した研究群。
親子で学べる療育教室 発達支援ゆず