アンパンマンこそ本当のヒーロー?弱さを出せる子が強い理由

弱さを出せる子は強い アンパンマンに学ぶ本当のヒーロー

本当のヒーローって、どんな人?

こんにちは。
発達支援ゆずの西村猛(ゆずのおっちゃん)です。

突然ですが「本当のヒーローって、どんな人でしょうか?」

強くて、負けなくて、弱音を吐かない。

どんな敵にも立ち向かい、最後は必ず勝つ。

そんなヒーロー像を、私たちはどこか当たり前のものとして見てきました。


でも、子どもたちの世界で長く愛され続けているアンパンマンは、少し違います。

アンパンマンは、弱音を吐きます。

「顔が濡れて力が出ない」と言います。

そして、「助けて、ジャムおじさん」と助けを求めます。

それでも、子どもたちは彼を「かっこいいヒーロー」だと感じています。


実はここに、発達支援の本質が隠れているのではないかと、私は思うのです。

療育の現場では、時に「泣くな」「甘えるな」「できるまでやらせる」といった指導が「強さを育てる関わり」のように語られることがあります。


けれど、本当に強いとはどういうことでしょうか。

弱さを隠すことなのか。それとも、弱さを認め、助けを出せることなのか。

今回は、アンパンマンをヒントに、「本当に強い子」とはどんな子なのかを、一緒に考えてみたいと思います。

一般的なヒーローとアンパンマンの違い

多くのヒーローは、「圧倒的な強さ」で戦います。

敵に立ち向かい、力でねじ伏せ、勝利する。弱音は吐かない。助けも求めない。

その姿は確かに格好いいものです。

けれど、実はもう一つ大きな特徴があります。

それは、「戦いによって町が壊れてしまうこと」です。


例えば、ウルトラマンは怪獣と戦います。巨大な怪獣と戦うわけですから、当然、戦いは激しくなります。

そして戦いが終わる頃には、町は大きく壊れていることが少なくありません。

もちろん、わざと壊しているわけではありません。怪獣を倒すために戦った結果、町が壊れてしまうのです。


ところが、アンパンマンは少し違います。

アンパンマンは、ばいきんまんと戦っても、町が壊れるような戦い方をほとんどしません。まるで、「町を守ること」を優先しているかのように戦います。

誰かを守るために戦う。そして、なるべく誰も傷つけない。

そんな戦い方をしているのです。


そしてもう一つ、多くのヒーローとアンパンマンには決定的な違いがあります。

彼は、自分の弱点をはっきり知っています。

「顔が濡れると力が出ない」

これは、彼の最大の弱みです。

そして実際に、顔が濡れると本当に力が出なくなります。

さらに彼は、助けを求めます。

「助けて、ジャムおじさん」

このセリフを、何度私たちは聞いてきたでしょうか。

ここに、アンパンマンの「本当の強さ」があると私は思っています。

弱さを認められることは、本当の強さ

発達特性のあるお子さんの中には、できない経験が積み重なっている子、叱られる経験が多い子、自信を失っている子、「助けて」と言えない子が少なくありません。

特に未就学の時期は、周囲の大人の関わり方が、その子の自己像を大きく形づくります。

「なんでできないの?」「みんなできているよ」「泣かないの」

こうした言葉が積み重なると、子どもはどうなるでしょうか。

助けを求めることをやめます。不安を口にしなくなります。できないことを隠すようになります。

一見すると強くなったように見えるかもしれません。でもそれは、本当の強さではありません。


アンパンマンは、自分の弱さを知っています。そして、それを隠しません。

助けを求めることは、恥ずかしいことではない。弱いからこそ、助けてほしいと言える。

これはとても強い力です。

発達支援の視点で見ると「自己理解」「自己表出」「他者への信頼」が育っていなければ、「助けて」は出ません。

つまり、「助けて」と言える子は、自分を理解し、人を信頼できる強い子なのです。

ブラック療育が奪ってしまうもの

療育の世界には、残念ながら、「泣くな」「甘えるな」「できるまでやらせる」といった指導が、いまだに存在します。

強くするために、厳しくする。弱さをなくせば成長する。そう信じられている場面もあります。

こうした関わり方について、私は「ブラック療育」と呼んでいます。

これは私が提唱している言葉で、根拠の乏しい経験則や精神論によって子どもを追い込んでしまうような関わり方を指しています。


ブラック療育は、子どもから「助けて」と言う力を奪ってしまうことがあります。

助けを出せない子は、表面的には従順になります。

しかし内側では、不安や恐怖を抱えたままになります。

それは、アンパンマンのような強さではありません。

それどころか、これから先ずっと不安や恐怖を持ちながら、誰も信用できずに暮らしていくことにもつながりかねません。

子どもを強くするのは「環境」

子ども自身に「強くなりなさい」と求めるのではなく、「できないと言っても大丈夫」「不安を言葉にしても否定されない」「助けを出したら応えてもらえる」そんな環境をつくること。

それが、発達支援の土台になると私たちは考えています。


アンパンマンが戦えるのは、ジャムおじさんという存在がいるからです。

顔が濡れても、助けてくれる人がいる。新しい顔を焼いてくれる人がいる。

だから、また立ち上がれるのです。

ゆずに通う子どもたちの強さ

ゆずに通っている子どもたちは、決して「弱い子」ではありません。


「できない」と言える子。

「こわい」と打ち明けられる子。

涙を流すことで「困っている」と表現できる子。

その姿は、まさにアンパンマンです。


顔が濡れて力が出なくなる日もある。

うまくいかなくて、悔しい日もある。

でも、「助けて」と言える。誰かを信じられる。そして、また立ち上がる。

それは、本当の強さです。


発達支援ゆずは、子どもを無理に強くする場所ではありません。

子どもが安心して弱さを出せる場所です。


弱さを出せる子は、強い。

そしてその強さを、私たちは信じ続けます。


顔が濡れたときには、新しい顔を。

力が出ないときには、安心できる時間を。

ゆずに通う子たちは、みんなアンパンマンです。