採用情報はこちら

【事業所運営】療育事業所のスタッフ研修に「マネーリテラシー(お金に関する知識)」項目は必須だと思う件

弊社新入職社員研修資(1)※無断複製禁止

私は、療育事業所でのスタッフ研修において、マネーリテラシーに関する事項は必須であると考えています。

その理由は、「療育事業は社会にとっていいことをしている=儲け主義ではいけない」と考える方が一定数おられるからです。

マネーリテラシー研修を行う際に、最初に抑えておくべきこと(伝えておくべきこと)が、以下の3点だと考えています。

  • 療育事業はボランティア(無料相談所)ではない。
  • 民間事業所においては、利用料の獲得(売上)があるからこそ、給与支払い他社員への還元ができる。
  • 利用率を上げることは、利益増大となり、それは社員の労働条件の向上につながったり、事業拡大につなげることができたりする。

公費療育事業が、美容室の運営などと圧倒的に違うところは、スタッフがお金の受け渡しをしない(その日の売上を目で確認することがない)ところだと思います。

例えば、児童発達支援事業所だと、1回の利用につき、およそ9千円〜1万円程度の利用料がかかっています。

しかし、スタッフは、そのお金を毎回受け渡しするわけではないので、なんとなく無料で受けられている(サービス提供している)ように感じてしまうものです。

そして、そこに福祉的要素の大きい事業内容が重なって、より「お金は汚いもの」「経営者はあの手この手で儲けることばかりを考えている」といった思考になってしまうことが懸念されます。

そうすると、「利益を社長がピンはねしているのではないか?」「儲け主義は、福祉には似合わない」などの発言が聞かれるようになります。


実際、弊社でも、見学に来られた方が結局利用につながらなかったケースに対して「◯◯様(保護者のお名前)は利用につながらなかった方ですが、療育について色々お話差しあげて、しっかり学んでいただいたので、それはそれで良かったですよね」といった主旨の発言をしたスタッフがいました(すでに退職された方です。現在在籍しているスタッフで、そのような発言をする人はいません)。

それは、大きな勘違いです。

私は、その時に「マネーリテラシーの研修は必須だな」と感じました。

それ以来、弊社では、新入社員研修においては必ずマネーリテラシーについての研修を積極的に行うようになりました。

弊社新入職社員研修資(2)※無断複製禁止

療育事業者は、ボランティア団体ではありません

対価をいただいて、その代わりに専門性の提供を行っている集団です。

反対に考えると、専門性を提供しているからこそ、対価をいただいている。つまり、専門性を提供できているなら、堂々と対価をもらうべきなのです。

「福祉=ボランティア」的な思考に陥ったスタッフは、利用率を上げることが自分の労働条件改善につながっていると認識できていないと思います。

利益は事業拡大につなげる資本になりますが、「儲けてはいけない」がまかり通ると、事業拡大はできなくなります。

事業としての利益拡大は「スタッフの労働条件にもつながってくる」ことにつながります。

利益がないと社員の労働条件は良くならないのは自明のことですが、福祉畑に長くなればなるほどその感覚は薄れていきがちです。

ここをしっかりとスタッフに認識してもらう必要があります。

マネーリテラシーや「なぜ、事業所は、利用率を上げ利益を最大化しなければならないのか」という理論が理解できていないと、極端な話「会社が赤字であっても、自分の給与や賞与がきちんと振り込まれればよい」という考え方になっていくリスクがあります。

また、私が経験したように、「利用者が少なくても『喜んでいただければ、本望』」などと、スタッフが安易に発言してしまうことにつながりかねません。

弊社新入職社員研修資(3)※無断複製禁止

「利用率がどの程度に落ちると、赤字運営になるのか」

「赤字運営になると、社員の皆さんにとって、どのようなマイナス影響があるのか」

「利用率を上げるために(利益が増大するために)、スタッフができることは何なのか」

といったことについて、会社の実情も紹介しながら説明します。


実は、この会社の実情をはっきりと説明することが重要です。

細かな金額まで伝える必要はないですが、「人件費率は◯◯%」「先月(あるいは昨年度)に比べ、利益率が◯◯%低下した(あるいは上昇した)」など、スタッフがイメージしやすい形で伝えます。

また、児発管や担当スタッフが、「利用率を上げろと言われたので、上げるように考える」のではなく、利用率を上げることが、自分たちにどう影響するのか、を常に考えながら思考・行動するように伝えています。

これらにより徐々に「欠席率を下げないための質の高い療育提供を意識」「足掛けで事業所を利用されることがないよう、しっかりと保護者に対して弊所理念を伝達していく」「振替を確実に確保する」など、スタッフ間での行動変容につながっていることを実感しています。

弊社新入職社員研修資(4)※無断複製禁止

療育支援者の多くは、療育実践に対して、勉強熱心です。

そのため、療育スキルを上げるための学び(研修受講や自学自習)は熱心にされる方が多いです。

しかし、マネーリテラシーについては、ほとんどの方が学んでいないですし、それ以前に「スキルを上げることが自分の学びである」と認識されていると思います。

しかし会社の利益と自分の利益をしっかり考えることができなければ、そもそも仕事として成り立たなくなります。

療育スタッフの方にここを理解していただくことができれば、「療育の質」と「収益」を両立させることができると言えます。


私の尊敬する経営者の一人である、星野リゾート代表の星野佳路氏は「社員の力で最高のチームを作る」(ケン・ブランチャード著)の監訳者あとがきの中で、次のように述べています。

企業の存続、そして社員の生活にとって利益が大事であることは誰もが理解してくれた。顧客満足を高めていくことが収益の安定に結びつくであろうという仮説も理解してくれたが、どうやってこの2つの数字をバランス良く両立させながら向上していくか、これが経営のテーマであり、それを社員全員の共通の課題とした。

福祉の世界は、未だ「療育の質の高さと収益は相反する」と考えている方は多くいます

しかし、令和6年の制度改正に向けて、厚労省は療育の専門性をより高めることを目標に議論を進めています。

それは、いよいよ療育業界も過当競争の時代に突入したことを意味します。

そのため、質の担保と収益の両面から考えることができるスタッフの育成は、今後の競争を生き残っていくためにも、とても重要な要素の一つであると考えられます。


その第一のステップとして、療育事業所スタッフの「マネーリテラシーの学習」や「療育の質と収益の最大化の両立に向けて、自分たちができることを考えていく」ことは、必須の事項であると言えます。

【事業所オーナー様限定】オンライン単発相談

弊所では、スタッフ育成に悩んでおられる事業所オーナー様向けのコンサルティング事業も行っております。

単発相談の形式で、必要な時に必要な分だけご利用いただけます。詳細は下記リンクをご覧ください。

https://illuminate-kobe.co.jp/services/single-consultation/