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貴所の利用をやめて他事業所に変わっていく利用者に対して「やってはいけないこと」と「やるべきこと」

児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所など、障害児通所事業を運営していると、利用者が貴所の利用をやめて他の事業所さんに移っていく、という事例は日常的にあると思います。


弊社でも同じで、(多少は時期にもよりますが)2ヶ月に一組程度の割合で、そういった利用者がおられます。


これは他の業種でもそうですが、顧客は何もしなくても(問題がなくても)1年で2割程度は自然に減っていくと言われています。


そのため、一気に離脱が増えたなどのイレギュラーな動きがなければ焦る必要はないと思います。

だからといって放置しておくのではなく、できる限りの対策を取る必要があると思います。


また、利用を止める利用者に「なぜ他所へ変わられるのですか?」と尋ねても、なかなか本音を言ってくれることも少ないかもしれません(それなりに理由はお話してくれると思いますが、時間の都合など物理的な難しさ以外の理由の場合は、本当の理由を話してくれているかどうか分かりません)。


そこで、今回は「理由はわからないけれど、他の事業所さんに変わる利用者(保護者の方)」に対して、「貴所がしてはいけないこと」と「貴所がするべきこと」について、弊社の取っている方法も含め、考察したいと思います。

他事業所様に変わっていく利用者様に対してやってはいけないこと

やってはいけないこと、それは強引に引き止めることです。

人は、止められると反発したくなるものです。

すでに、止めるという決断をされている方に対して、いくら説得を試みても、余計に「それがしんどい」と思われてしまうと、完全に逆効果になります。

弊所でも経験があることなのですが、実は利用を止めるまでに、保護者の方から何らかのサインが出ていることがあります。

それは、「欠席率が高くなる」「当日急に休むことが増え、その理由がいまいちはっきり分からない」など、小さな変化です。


その時に、スタッフが「気付かない」または、「あれ?何か気になるな」と思っても「ま、いいか。何か理由があるのかも・・・」と深く思考せずにいると、後に「利用終了」につながるリスクがあるため、事前に手立てを講じておくべきです。

つまり、利用を止めますと言われる前に、対処をしておくことが重要で、止めることを聞いてから引き止めても、「時すでに遅し」の感は否めません。

では、具体的にどうすればいいか、ということについては、下記で考察します。

貴所がやるべきこと

では、何らかの理由により、既存の利用者様が他の事業所様に変わっていく時に、貴所がやるべことを考えて行きたいと思います。

それは、分析と考察、そしてネクストアクションです。

まずは分析

なぜ、貴所を離れることになったのかについて、客観的に分析する必要があります。

療育内容に疑問を持っているのか、スタッフの声掛けや対応に関する不満なのか、他に魅力的な事業所さんができたからなのか、仲の良い友人に言われたからなのか、など、理由は千差万別です。

そして、その理由を2つに分類します。

①自社やスタッフの行動を変えることで、改善につながること(内部的要因)
②自社やスタッフの取り組みでは、どうしようもないこと(外部的要因)

①については、改善の余地があるということになりますので、その部分をより深く掘り下げ、対処方法を考えていくという「考察」のフェーズに進みます。

内部的要因を考察し、対処方法を見つける

例えば、「どのような目的で療育を行っているのか分からない」と保護者が感じて利用をやめる決断に至った(と考察される)なら、「理念をより明確にし、分かりやすく発信する」という対処方法が見つかると思います。

例えば「理念をワンフレーズで、分かりやすいものにする」「ホームページやパンフレットに大きく明示する」「スタッフ全員に再度理念の周知を行い、日々業務を振り返る際の指標にしてもらう」などが浮かぶと思います。


他には、スタッフの何気ない一言で気分を害された(スタッフは悪意を持っていないにも関わらず)」という理由が考えられれば、「どのような言葉掛けが保護者にとって不快と感じるのか」「どのような言葉掛けをすると、保護者は安心していただけるのか」を考察し、そこから「具体的な言葉掛け見本(悪い例と、良い例など)を決めておく」といった、「具体的な対処方法」を決定していく、なども挙げられます。

このように考察と対処方法が具体的に見つかれば、後はアクションのみです。

ネクストアクションにつなげる

ネクストアクションは、オーナー様や管理者様、スタッフの皆様が実際に行動に落とし込まないとできないことです。

「分かった!」を「できている(行動している)」に変えるためには、オーナー様や管理者様の積極的な働きかけが必要になります。


また、児童発達支援管理責任者(児発管)の方が、オーナー様や管理者様の理念をどれだけ理解しておられるかといったことも、ネクストアクションにつながる大きな要因になると思います。


そのため、ネクストアクションにつなげる前に、理念の浸透と実践への落とし込みは、必ず行っておく必要があると思われます。


弊所でも、スタッフが理念を十分に理解していないことで、スタッフが「自分がいいと思う療育」を実践してしまい、弊所の理念に基づいて活動できるようになるまでに、かなりの時間とエネルギーを費やしたという経験があります。

ネクストアクションにつなげるには、理念をいかに現場スタッフ様にまで落とし込むことができるか、が何より大切になりますので、ぜひ一度、貴所の療育理念について振り返る、または現状に合ったものを取り入れ整合性を図っていくというのも現状を打破することにつながるかと思います。

万人に受ける必要はないという気持ちが、上手くいくポイント

内部的要因については、上記の通りですが、では外部的要因から利用中止が起こった場合は、どのように対処するべきでしょうか。


私は、「外部的要因により離脱していく利用者は、どのような手立てをしても一定数いると理解する」「万人に受ける必要はないので、貴所理念にあった利用者様を獲得することに注力する」ことが、「今できること」ではないかと考えています。

青天井の事業ではないことも、いい意味で作用します。

定員10名の事業所様なら、毎日10名の方が、「貴所を信頼して」通っていただくことができれば十分運営は安定すると思いますし、また信頼してくださっている方なら、安易に離脱していかないと思います。


そのため、オーナー様、管理者様、スタッフ様が全員一致で、「信頼して通ってくださっている方を、絶対に失望させない」という一点に注力するべきだと考えています。


その取り組みは、貴所内部の質を高めることになり、それがひいては「内部的要因による離脱者を防ぐ(出さない)」ことにつながると思います。

強引に引き止めるよりも、内部の見直しとファンの構築を

利用を止める、と聞いた時、人はつい「そういわずに、もう少し通ってみませんか?」や「ぜひ、来て下さい!」あなど、なんとか引き止めをしようとするものです。


ですが、保護者の方が止めると決めた背景には、こちらの想像できないような理由があることが多く、また保護者の方もよくよく思案して決めていることも多いと思います。


そのため、引き止めることでつなぎとめようとするのではなく、理由を考察し内部的要因であれば、次に同じような方が出ないように原因究明と対処を検討し、外部的要因であればいい意味で諦め、その代わり「貴所のファン」を増やすことに注力する、ことが安定した運営につながるものと思われます。


利用者全員が、貴所のファンであれば、安定した運営ができるだけでなく、利用者からの口コミなどで「ぜひ貴所を利用したい」という見込み利用者を増やしていくことにもつながると思います。


それらの大前提として、理念構築とスタッフ様への理念浸透に注力してみられてはいかがでしょうか。