
ゆず代表の西村猛です。
「療育に通っているのに、思ったほど変化を感じられない。」
そんな不安を抱えたことはないでしょうか。
もちろん、発達はすぐに結果が出るものではありません。数か月、数年という時間をかけながら少しずつ育っていくものです。
それでも、「なぜこの活動をしているのだろう?」「この練習は何につながるのだろう?」「本当にうちの子に合っているのだろうか?」と疑問を感じることがあります。
実際にゆずへ相談に来られる保護者の方の中にも、「療育には通っているけれど、このままでいいのか分からない」「質問しても、なぜそのプログラムをしているのかよく分からない」と話される方がおられます。
こども発達LABO.のオンライン相談でも、数十組の親御さんのこういった「療育のお悩み」にお答えしてきました。
今回は、そんな私の経験から「療育に通っているのに変わらない」と感じたときに、一度立ち止まって考えてみてほしいことについてお話しします。
「変わらない」のは本当に子どものせいでしょうか?
療育に通っていても、
- 落ち着きがない
- 字を書くことを嫌がる
- 集団活動が苦手
- 癇癪が続く
といった困りごとが残ることがあります。
すると保護者は、「もっと練習が必要なのかな」「回数が足りないのかな」と考えがちです。
しかし、本当にそうでしょうか。
例えば、鉛筆が苦手なお子さんがいたとします。そのとき、「鉛筆の練習をしています」という説明は間違いではありません。
ただ、保護者が本当に知りたいのは、「なぜうちの子は鉛筆が苦手なのですか?」ということではないでしょうか。
姿勢が不安定なのかもしれません。力加減が難しいのかもしれません。手や指を思うように動かせないのかもしれません。あるいは、失敗への不安が強いのかもしれません。
同じ「鉛筆が苦手」でも、その背景はお子さんによって違います。
だからこそ大切なのは、何を練習するかではなく、なぜ難しいのかを理解することです。
「練習しています」だけでは不安はなくならない
私たちは療育の現場で、保護者の方が本当に求めているのは練習メニューではなく、「我が子の説明」だと感じています。
なぜ集団が苦手なのか。
なぜ座ることが難しいのか。
なぜ字を書くことを嫌がるのか。
その理由が分かれば、保護者の方は療育プログラムの方向性に納得できます。
反対に、「続ければできるようになります」「まずは繰り返しましょう」という説明だけでは、不安や迷いは残ったままです。
もちろん、練習が必要な場面はあります。
しかし、その練習が何のために行われているのかが分からなければ、保護者もお子さんもゴールが見えません。
療育は「課題をこなすこと」が目的ではなく、お子さんの成長につながることが目的だからです。
本当に大切なのは「見立て」です
私たちは、療育で最も大切なのは見立てだと考えています。
例えば、「集団に入れない」という困りごと一つとっても、
- 不安が強い
- 感覚的に疲れやすい
- 話の理解が難しい
- 何をすればよいか分からない
など、背景はさまざまです。
もし不安が原因なら、まず必要なのは安心できる関係づくりかもしれません。
もし理解の難しさがあるなら、伝え方を工夫する必要があるかもしれません。
つまり、同じ行動でも、原因が違えば療育方針やプログラムも変わるのです。
だから私たちは、「何をするか」の前に、「なぜ難しいのか」を整理することを大切にしています。
今通っている療育で「見立てをしてもらえているかどうか」を確認する方法
今、どこか療育に通っていて、「この子の見立てをしてもらえているのかな」と不安に感じた時は、「どうして〇〇(お子さんの困りごと)ができないのでしょうか?」と聞いてみるといいと思います。
その際に保護者の方が納得いく、または腑に落ちる回答をもらうことができれば、見立てについてしっかり考えてもらえている可能性があります。
もし、「苦手だから、うまくできるように練習しています」というお答えになるなら、見立てる前に練習が始まっているのかもしれません。
ちなみに、納得いく回答を得られた場合に、一つだけチェックしておいてほしいことがあります。
それは、その見立てが「誰にでも当てはまることを言っているかどうか」です。
たとえば「まっすぐに座れずにすぐに席を立ってしまう」という困りごとの見立てが、「体幹が弱いからです」という答えだったとします。
これは一見、正しいように聞こえるかもしれません。しかし、多くのお子さんがじっと座れない理由は、体幹が弱いからだけではありません。
そのため、「座れない→体幹が弱い」という一般論で説明されているだけかもしれないのです。
こうなると、「じゃあ、見立てが当たっているかどうか、親はどうやって見抜けばいいの?」と思われますよね。
そこで、さらに確認してみてほしい質問があります。
それは、「うちの子のどんな様子から、そう考えられたのですか?」という質問です。
もし本当にお子さんを見て見立てをしているなら、「〇〇の場面では落ち着いていますが、△△になると難しくなります」「□□はできていますが、◇◇になると苦手さが見られます」「このような様子が見られたので、私はこう考えています」というように、お子さんの具体的な様子をもとに説明してくれるはずです。
一方で、「発達障害のお子さんにはよくあります」「こういうケースは多いです」「一般的には〇〇が原因と考えられます」という説明だけで終わる場合は、そのお子さん自身を見ているというよりも、一般論を話しているのかもしれません。
もちろん、一般論が間違っているわけではありません。しかし、本当に必要なのは、「特性がある子によくあること」ではなく、「なぜ、この子に今その困りごとが起きているのか」を理解することです。
見立てとは、困りごとに理由を当てはめることではありません。
その子をよく観察し、その子に起きていることを理解しようとすることです。
だからこそ、療育を受ける際には、「何をしているか」だけでなく、「なぜそう考えたのか」もぜひ聞いてみてください。
その説明がお子さんの具体的な様子に基づいていて、「なるほど、だからこの支援をしているんですね」と納得できるものであれば、その療育はお子さんをしっかり見ようとしている可能性が高いと思います。
ゆずが大切にしていること
発達支援ゆずでは、「できるようにすること」だけを目標にはしていません。
その前に、「なぜ難しいのか」「どんな力が育ち始めているのか」「どのような方向性で進めるべきなのか」を保護者の方と一緒に考えることを大切にしています。
また、私たちは保護者の方にも、「なぜこの活動をしているのか」をできるだけ分かりやすくお伝えしたいと考えています。
なぜなら、療育は専門家だけが行うものではなく、保護者と療育担当者が同じ方向を向いて進んでいくものだからです。
おわりに
療育に通っているのに変化を感じられないとき、回数を増やす前に、練習を増やす前に、ぜひ一度考えてみてください。
「この療育プログラムは何のために行われているのだろう?」
もしその理由が分かり、お子さんの状態と結びついて理解できるなら、その療育はきっと意味のあるものです。
反対に、「なぜその支援なのか分からない」という状態が続いているなら、今必要なのは練習ではなく、お子さんのことを改めて整理する時間なのかもしれません。
療育で本当に大切なのは、「何をさせるか」ではなく、「その子に何が起きているのかを理解すること」「その子が出しているヘルプサインを見つけていくこと」だと、私たちは考えています。
親子で学べる療育教室 発達支援ゆず
