30日通うより、意味のある10日を 〜療育は日数を減らした方が上手くいく理由〜

こんにちは。ゆずグループ代表・理学療法士の西村猛(通称:ゆずのおっちゃん)です。

児童発達支援や放課後等デイサービスを利用されている保護者の方から、こんな声をよくお聞きします。

「受給者証を見ると、月◯日まで使えますと書いてあるのですが、せっかくなら、できるだけ日数を埋めたほうがいいのかなと思ってしまうのですが。。。」

我が子のためになることなら、できるだけやってあげたい。

その気持ちは、親としてごく自然なものだと思います。


ただ、ここで一つはっきりとお伝えしておきたいことがあります。

それは「療育の日数は、多ければ多いほど良いというわけではない」ということです。


むしろ、日数を増やしすぎることで、

  • 子どもがオーバーワークになってしまう
  • 家庭や園・学校での時間が削られてしまう
  • 複数の事業所の方針がバラバラになり、かえって伸びにくくなる

といったことが起こるケースも少なくありません。

そして何より大事なのは、「何日通っているか」ではなく、「1回1回の療育で、どんな関わりをしているか」「その関わりが、日常生活とどうつながっているか」です。

私は以前、神戸市総合療育センターに勤務していました。

そこでは、多くのお子さんが「多くて週1回」という頻度で通っていましたが、それでも十分に変化を生み出せることを、現場で何度も経験してきました。

その経験を通して、「回数を増やすこと」よりも「関わり方と積み重ね方」のほうがずっと大切だと感じています。


そこで今回の記事では、

  • なぜ「日数を減らしたほうが、かえって上手くいく」ことがあるのか
  • 私が療育センターで学んだ、「回数に頼らない」療育の考え方
  • ゆずが大切にしている、「意味のある10日」の作り方

についてお話ししていきます。

「日数を埋めること」がゴールになると、うまくいきにくい

受給者証を見ると、「月◯日まで利用可」と書いてあります。

それを見ると、多くの保護者の方が、こう感じられます。

  • せっかくなら、日数は多いほうがいいのでは?
  • 全部使わないともったいないのでは?
  • 回数が少ないと、親がサボっていると思われないか心配

こうしたお気持ちは、どれもとても自然な親心だと思います。

「この子のためになるなら、できることは全部しておきたい」と思うのは親として自然なことです。


しかし、ここに一つ大事なポイント(というか意外な落とし穴)があります。

それは、「療育の日数が多いほど、必ずしも効果が高くなるとは限らない」ということです。

回数よりも、「どんな関わりをしているか」が大事

療育で本当に大切なのは、「お子さんの現状を正しく把握しているか」「1回1回のかかわりに、どれだけ明確なねらいがあるか」「そのかかわりが、家庭や園・学校の生活とつながっているか」「お子さんの負担や家族の生活リズムに合ったペースで続けられているか」といった点です。

言い換えると、「何日通っているか」よりも、「どんな質の関わりを、どう積み重ねていっているか」が、子どもの伸び方を左右します。

これは未就学児であるほど、重要な事項です。

日数が多くても、毎回やっていることがバラバラだったり、家庭生活に全く生かされていなかったりするなら、それはマイナスにもなってしまいます。

逆に、回数が少なくても、「その子に合わせた目標を共有し」「家庭や園・学校と連携しながら」「同じ方向性でかかわりを積み重ねていく」ことができれば、子どもはしっかり変化していきます。

この「回数より関わり方」という考え方の根本には、私が以前勤務していた神戸市総合療育センターでの経験がベースになっています。

神戸市総合療育センターで学んだこと

私は長年公務員理学療法士として、神戸市総合療育センターに勤務していました。

そこでの療育の多くは、「週1回」または「2週に1回」という頻度でした。

今の児童発達支援事業所のイメージからすると、「週3〜5回通う」のが一般的だと感じている方も多いかもしれません。

そんな中で、「週1回」という頻度を聞くと、「そんな少ない回数で、本当に意味があるのだろうか?」「もっとたくさん行ったほうが伸びるのではないか?」と感じる方もいると思います。

ところが、現場で子どもたちと関わる中で、私は何度も「週1回でも、十分に変化を出すことができる」と実感してきました。

なぜそのようなことが可能なのか?

それは、次のようなことを大事にしていたからです。

  • 1回の関わりの中で、「今日のねらい」をはっきりさせる
  • その子の今の状態をていねいに評価し、無理のないステップを設定する
  • セラピーの最後に、「おうちでできる工夫」や「明日から試してほしい関わり方」をご家族と一緒に確認する
  • 次回のご来所時に、保護者の方からフィードバックをいただき、ネクストアクションにつなげる
  • 園や学校とも情報を共有し、できる範囲で同じ方向性でのサポートをお願いする

つまり、療育センターでの1時間だけで何かを完結させるのではなく、「週1回の関わりをもとに、日常生活の中に変化のタネをまいていく」ようなイメージで取り組んでいくわけです。

その結果、週1回の通所であっても、お子さんだけでなく、保護者の方においても療育の効果が積み重なっていくのを何度も見てきました。

こういった経験を多くしてきたことから、私ははっきりと、「回数が多いかどうかよりも、1回の関わり方と、それをどう日常につなげるかのほうが、ずっと大事」ということについて確信を持つようになりました。

要は回数ではなく、質が大事ということです。

日数を増やしても、関わりがバラバラならもったいない

一方で、民間の療育事業所の利用においては、

  • 受給者証の日数をめいっぱい入れて、月25日〜30日通う
  • 複数の事業所を掛け持ちして、ほぼ毎日どこかに通っている

というケースも少なくありません。

もちろん、状況によってはそれが必要な場合もありますが、実際には多くのケースにおいて、「子どもが疲れ切って、かえって落ち着きにくくなっている」「事業所ごとに方針や声かけがバラバラで、親も子どもも戸惑う」「家庭でゆっくり過ごしたり、親子で遊ぶ時間がほとんど取れていない」といった状態になってしまっていることも見られます。

神戸市総合療育センターで「週1回でも変化が出せる」ことを経験してきた私からすると、「これだけたくさん通っているのに、かえってしんどくなってしまっているのは、とてももったいない」と感じざるを得ません。

しかもそれが効果につながっているのであればまだマシですが、上記の通り多くの方ではデメリット(お子さんとご家族にとってマイナス効果)につながっています。

本当に「もったいないなあ」と思ってみています。

ゆずが大事にしたいのは「整合性のある積み重ね」

私の療育センターでの経験から、発達支援ゆずでは、下記のような方針を取っています。

  • 受給者証の日数を埋めることを目的にしない
  • 1回1回の関わりのねらいをはっきりさせる
  • 家庭や園・学校とつながる療育内容を意識する
  • 子どもとご家族の「しんどさ」をきちんと見る

私たちが理想としているのは、「バラバラな療育を30日詰め込む」より「方向性が揃った療育を10日程度でじっくり積み重ねる」スタイルです。

その方が絶対に効果が出ます。

回数多くしたらよりできるようになるという考え方は、子どもの発達においては正しくありません。

え?見学ではそう聞いたことがある?

そりゃあそうです。

事業所としてはできるだけたくさん来てもらったほうが収益が上がるので、たくさん来ることをオススメするに決まっています(そのまま言うと角が立つので「たくさん来たほうが効果的ですよー」という表現になると思います)。

こういった事業所の事情に振り回されないように、保護者の方が正しい知識を持ってほしいと思っています。

もちろんゆずも赤字運営でも良いなんて思いません。会社の成長やスタッフの労働条件をもっと良くしていきたいですから、その原資となる収入は必要です。

だからといって、「たくさん通わせること」を推奨して収益を上げようと思ったことはありません。そういう考え方はしたくありません。

私たちが質の高い、そして効果的な療育を行えば「ゆずに通わせたい」という方が増えるので、自然に収益は確保できます。

つまり、「順番が違う」と言いたいのです。


そんな方針であることから、ゆずの見学対応においては、

方針の違う療育を複数受けることは、お子さんやご家族にとってマイナスになります。

これは、ゆずを大事にしたいからではなく、お子さんとご家族のしんどさを増やしたくないからです。

だからそんな状況になるぐらいなら、ゆずを切ってください。

というお話をすることもあります。

状況によっては、「今はゆずを少なめにして、他の事業所さんを優先しましょう」という提案になることも、本当にあります。

それは、「無理に来てください」と言うよりも、「この子とご家族の人生にとって、長い目で見ていちばん良い選択を一緒に考えたい」と思っているからです。

同時に、私たちの療育を選んでいただいた方には「ゆずにしてよかった」と思っていただける療育が提供できる、という自負もあるからです(日々スタッフがどれだけ真摯に学んでいるかを知っているからです)。

ひっそり佇む隠れ名店のように、「分かる人に選んでもらえたらいい」「分からない人に無理やり通所を迫っても、お互い不幸になるだけ」という方針は、開所以来変えていません。

おわりに

「このままの回数でいいのかな?」と悩まれている保護者の方は、意外にも多いです。

大丈夫です。

受給者証の日数をすべて使わなくても、回数が少なくても、関わり方と積み重ね方しだいで、お子さんはしっかり伸びていきます。

反対に療育スケジュールをいっぱいに詰め込むことで、成果が出ないだけでなく、お子さんの疲労から癇癪やこだわり、ストレスが悪化していく事例も多くあります。


セルフプラン(保護者が利用する事業所を決める)が主流になってきている今、どの療育をどの頻度で受けるかは、保護者の方が自由に選べます。

それは、反対に「療育の組み方を間違っていても、誰も間違いを指摘してくれない」ということでもあるのです(セルフプランの罠)。

つまり保護者の方の自己責任論が通ってしまうのが、今の日本の療育の課題です。


我が子のために、と思ってしていることが、結果的に我が子にしんどい想いをさせているなら、それは早く解消したほうがいいに決まっています。

子どもは自分から「療育スケジュールがキツくてしんどい」とは言いません。

その代わり、「イライラ」「不眠」「癇癪」などで表現します。

だからこそ、大人は子どもなりの「ヘルプサイン」に気づいてあげる必要があります。


もし今、スケジュールの組み方で悩んでおられるようでしたら、一度「療育を減らしてみる」という選択も検討してみてください。

人生の基礎を作る幼児期に、「療育三昧だった」という記憶しか残らないのは、勿体ないです。

二度と戻ることのない、今という時間を、「お子さんとの時間」として使ってあげてください。

あなたのお子さんは、療育を受けるために生まれてきたのではありません。

できないことを指摘されるために生まれてきたのではありません。

親御さんやごきょうだいに大切にされ、愛されるために生まれてきたのです。


本来、療育は子どもの可能性を引き出す素晴らしい活動です。私たちも本気で取り組んでいます。

それでも、人生の主役は「療育」ではなく「お子さんとご家族」です。

一番に考えるべきは、「療育プログラム」ではなく、「ご家族の楽しい毎日」です。


だからこそ「療育ごとき」に振り回されないでください。