
こんにちは。理学療法士のにしむらたけし(ゆずのおっちゃん)です。
姿勢が崩れやすい、じっと座っていられない…そんなお子さんの様子を見て、「うちの子、体幹が弱いのかも?」と感じたことはありませんか?
でもちょっと待ってください。その“弱さ”、実は「低緊張」というまったく別の特性かもしれません。
この記事では、ゆずのYouTubeチャンネルで配信中の動画『体幹が弱い?それとも低緊張?見分け方、知ってますか?』(2023/7/26公開・1.1万回再生)の内容をもとに、理学療法士の視点から2つの違いと見分け方、そして正しい対応の仕方をわかりやすく深堀りしていきます。
「運動させたほうがいい?」「無理させたら逆効果?」
そんな保護者の方の悩みに、具体的にお答えしていきますので、ぜひ最後までご覧ください(記事の最後にはこの動画を貼っていますので、振り返りにご視聴くださいね)。
「体幹が弱い?それとも低緊張?」
発達支援ゆずの「ゆずカフェオンライン」では、保護者の皆さんから寄せられた疑問に、スタッフが動画でお答えするという取り組みを行っています。
今回のテーマは、「体幹が弱い」と「低緊張」の違い。とても似て聞こえるこの2つですが、実はまったく異なるメカニズムで起こっており、対応の仕方も変わってきます。
体幹が弱いってどういうこと?
まず「体幹が弱い」というのは、胴体についている筋肉(腹筋や背筋など)がうまく発達していない状態を指します。
これは筋肉の“力”の問題であり、「筋力が足りないから弱い」ということになります。
体幹の筋力が育たない原因としては、日常生活で体を大きく動かす機会が少ないことが挙げられます。
外遊びが少ない、走ったり登ったりといったダイナミックな動きの経験が少ない、こうしたお子さんは体幹が育ちにくい傾向があります。
ただし安心してください。体幹の筋力不足は、特別なトレーニングをしなくても、遊びの中で自然と育てることができます。ジャンプ、走る、転がる、登るなど、全身を使った遊びを「楽しく」「たくさん」経験することが一番の対策です。
低緊張とは?筋力の問題ではありません
一方、「低緊張」という言葉は、最近少しずつ耳にするようになってきました。
これは筋力ではなく、筋肉の“張り”がゆるい状態のことを指します。
筋肉には、ゴムのような「張り(緊張)」があります。
この張りがあるからこそ、人はまっすぐ座ったり、立ったりできるのです。低緊張の状態では、このゴムがゆるんでいて、体がぐにゃっと崩れやすくなります。
重要なのは、低緊張は筋肉そのものの問題ではなく、脳から筋肉への「張っててね」という指令が弱いことによって起こるという点です。
つまり、体幹の筋肉が悪いのではなく、脳からの指令がもともとゆるめに設定されているという状態なのです。
つまり、低緊張は“治す”ものではありません。その子の身体の特性として理解し、無理のない範囲でサポートしていくことが大切です。
どう見分ける?体幹が弱い vs 低緊張
保護者の方からよくあるご相談が「どちらなのかわからない」というもの。
確かに見た目は似ていますが、いくつかのポイントを押さえると、判断の助けになります。
- 発達特性の有無
自閉スペクトラムなどの発達特性があるお子さんには、低緊張の傾向が強いことが多いです。 - 持久力の違い
筋力がある子でも、椅子に座って折り紙を続けるなどの「静的な活動」が苦手な場合は、低緊張の可能性があります。 - 姿勢の崩れ方
姿勢を保てず、だんだんと姿勢が崩れてくる場合は、体幹ではなく低緊張が原因かもしれません。 - 反張膝(膝の反り)
膝が通常よりも後ろに反っているような立ち姿勢が見られる場合、これは典型的な低緊張のサインです。
知らずにやってしまいがち?注意が必要な対応
姿勢が崩れている=体幹が弱い、と判断して、運動療育を始めるご家庭もあります。
しかし、もし低緊張の子どもに、無理な運動をさせてしまうと、身体的にも精神的にも大きな負担になります。
「がんばって!」と励ましても、本人の身体がそれに応えられない状態なのです。
結果、運動そのものが苦手になったり、療育自体を嫌がったりするようになることもあります。
正しい療育の選び方とは?
大切なのは、「ちゃんと見立てをしてもらうこと」。
理学療法士や作業療法士といった、発達の評方法価に精通した専門職がいる場所であれば、お子さんの体の状態を正しく評価し、またお子さんにとって無理のないアプローチ方法(プログラム)を見つけることができます。
ちなみに発達支援ゆずでは、マンツーマン療育を基本とし、専門職による個別評価を大切にしています。「今日のプログラムは○○します(あらかじめ決まっている)」ではなく、「お子さんの状態に合ったプログラムを毎回組み立てる(子どもに合わせて決める)」というスタイルです。
まとめ:子どもを見る目を育てよう
「体幹が弱い」と「低緊張」は、原因も対処法もまったく異なります。
大切なのは、「よくわからないから、とにかく動かしてみる」ではなく、「この子はどんな特性があるのかな?」と立ち止まって考えることです。
もしご家庭での判断が難しい場合は、ぜひ専門家に相談してみてください。
もちろんゆずでも、保護者の方のご相談を随時受け付けていますので、気になる方はご見学にお越しください。また遠方の方は自費のオンラインサービス(単発相談やプレミアムサポート)もご利用いただけます。
お子さんの「伸びるチャンス」を見逃さず、「今のままでも大丈夫」と思える安心感を、一緒に育てていきましょう。特に幼児期は一年ごとに変化を引き出しやすい時期です。
だからこそ、効果的な関わり方や療育を受けることが何より大切です。