
こんにちは。言語聴覚士の西村千織(むぎちょこ)です。
「単語は話せるけど、まだ2語文が出ません…」
そんなふうに不安を抱える保護者の方から、日々たくさんのご相談をいただきます。
この記事では、2語文が出ない時期のお子さんへの関わり方について、言語聴覚士の視点から丁寧にお話しします。
また、記事の最後には「家庭でできること」や「よくある誤解」についてもまとめていますので、ぜひ最後までお読みくださいね。
2語文ってなに?どんな意味があるの?
2語文とは、「わんわん きた」「ママ だっこ」「ジュース のむ」など、2つの単語を組み合わせて意味を伝える文のことを指します。
これは言語発達のなかでも大きな節目であり、「単語の羅列」から「文章の構成」へと進んでいくステップになります。
発達の目安としては1歳半〜2歳半ごろに2語文が出てくると言われていますが、もちろん個人差があります。
「言わせよう」とすると逆効果?
よくある声かけに、こんな言葉があります。
「“おかし、ちょうだい”って言ってごらん?」
実はこれは、一見よさそうで逆効果になってしまうことがあるんです。
なぜなら、すでにその表現ができる力があるなら、子どもは自然に使っているからです。
「言わない」のではなく、「まだ言えないだけ」なんです。
言えない理由は、単語を知っていてもそれをつなぐ力がまだ未熟だから。です。
2語文が出ないのはどうして?
2語文を話すには、いくつかの要素が必要です。
① 聴覚把持力(ことばを記憶する力)
「おかし」「ちょうだい」という2つの単語を、順番に記憶して口に出す力が必要です。
この記憶力のような力を「聴覚把持力(ちょうかくはじりょく)」と呼びます。
例えば「赤いくつと、お茶を持ってきてね」と言われて、ちゃんと両方持ってこられる。
こんな行動ができるようになると、言葉を覚えて、頭の中で整理して表現する力が育っているサインです。
② 語彙力(語の数)の不足
2語文は「名詞+動詞」「形容詞+名詞」などで成り立つため、語彙が一定以上必要です。
「いぬ+あるく」「おおきい+ボール」など、理解している語が増え、組み合わせができるようになることで、自然と2語文が出てくるようになります。
特に、動詞や形容詞は意識的に働きかけないと、語彙に入りにくい傾向があります。
言葉の土台は「伝えたい気持ち」
2語文の前に大切なのが、伝えたい気持ち=コミュニケーション意欲です。
感情が動くと、自然に言葉も出やすくなります。
たとえば…
• 熱湯に触れて「熱っ!」と叫ぶ
• 耳元で大声を出されて「うるさ〜い!」と訴える
• 美味しそうなケーキを見て「わぁ〜おいしそう!」と声をあげる
このように、声と言葉は「気持ち」と強く結びついているのです。
よくある誤解と注意点
❌ 間違った言い方をすぐに正す
「違うよ、“ママだっこ”でしょ」などと訂正しがちですが、正しさを求めすぎると話す意欲をなくしてしまうこともあります。
⭕️ 「伝わったこと」をまず喜んで受けとめる
それが子どもにとって、「言葉で伝えると楽しい!」という成功体験になります。
家庭でできる!関わりのヒント5選
- たっぷりの語りかけをする
絵本を読みながら「○○がいるね」「○○してるね」と実況中継風に話しかけましょう。 - わざと“待つ”時間をつくる
言いたそうなタイミングで、あえて少し黙って待つと、発語のきっかけになることも。 - 子どもの言葉を繰り返してあげる
「くるま!」→「そうだね!くるま きたね〜!」のように、大人が2語文で返すのも効果的。 - ジェスチャーも含めて“伝えられた体験”を増やす
言葉以外の表現も大切。ジェスチャーや指差し、表情も「伝える力」のひとつです。 - 否定しない、共感的に返す
「違うでしょ」ではなく、「そっか〜、そう思ったんやね」と気持ちを受けとめる返しを意識してみてください。
最後に|ことばの芽を育てるのは“安心感”です
ことばは、正しく言わせるものではなく、安心のなかで自然に育つものです。
間違ってもいいです。たどたどしくてもいいんです。
まずは、お子さんが一生懸命に伝えようとしたその“気持ち”を受け取ることが、言葉の第一歩になります。
繰り返しになりますが、
- 焦らず
- 比べず
- 否定せず
“伝えたい”という気持ちの芽を、あたたかく育てていきましょう。
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