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【療育のイロハ】「じっと座れない子ども」への誤った指導とは? 医学的根拠に基づく療育プログラムのポイント

子どもがじっと座れないのは「我慢が足りない」から?

「お友達は座れているのに、うちの子はじっと座れない……」「座る練習をさせれば座れるようになる?」と悩む保護者の方は少なくありません。

療育や幼児教育の現場でも、「我慢を覚えさせることが大事」「座る習慣をつければできるようになる」「周りのお友達を見て学ばせる」といった方法がよく取り入れられています。

しかし、実はこの考え方は医学的に誤りです。なぜなら、子どもがじっと座れないのは、「座れない」のではなく、「動いていると落ち着く」ためだからです。

例えば、こんな場面を想像してみてください。

  • 食事の時間、椅子にじっと座っていられず、すぐに立ち上がってしまう。
  • 絵本の読み聞かせが始まると、周りの子は座って聞いているのに、そわそわと動き回ってしまう。
  • 幼稚園や保育園の集まりで、ずっと座っていられず、周囲の大人に注意される。

こうした場面で「我慢が足りない」「しつけができていない」と考えがちですが、実際はそうではありません。

動くことで落ち着く脳の仕組み

子どもは動くことで、脳内にセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。セロトニンには気持ちを安定させる作用があり、適度な運動刺激を受けることで、子どもは落ち着いて活動に取り組めるようになります。

しかし、「じっと座ること」を無理に強いると、動きたいという本能が抑えられてしまい、逆に落ち着かなくなってしまうのです。その結果、

  • 集中力が続かない
  • そわそわしてしまう
  • イライラしやすくなる

といった問題が生じます。

「座る練習を繰り返せば座れるようになる」というのは根拠のない思い込みであり、むしろ逆効果になることが多いのです。

例えば、子どもがじっと座っていられず動いてしまう場合、30分間の座る練習を無理に続けさせるより、最初は5分だけ座って、次に体を動かす時間を作るほうが、結果的に座る時間が延びることがよくあります。

まずは「なぜ座れないのか」を考えよう

子どもがじっと座れない理由はさまざまです。

体幹の筋力が弱く、座る姿勢を維持するのが難しい

例:すぐに猫背になってしまい、座ることがしんどくなる。

感覚の過敏さや鈍感さが影響している(座面の感触が苦手、足が床につかないと落ち着かないなど)

例:椅子の素材が嫌で、ずっともじもじしてしまう。

動くことで注意を集中しやすい(ADHDの特性)

例:体をゆらしたり、何かを触っていないと話を聞けない。

こうした背景を無視して、「座りなさい!」と指導してもうまくいきません。「なぜ座れないのか」を分析することが、適切な対応につながります。

「しつけ」の問題ではない

「言って聞かせれば座れるはず」「やる気の問題」と考えるのは、大きな誤解です。そもそも、じっと座ることが難しい子どもにとって、静かに座ることは本人にとっても大きなストレスになります。

「できないことを無理にやらせる」よりも、「どうすれば座りやすくなるか」を考えることが重要です。例えば、

  • クッションを使って座り心地を調整する
  • 足をしっかり床につけられる椅子を用意する
  • ほどよく体を動かせる時間を設ける

といった工夫が効果的です。

例えば、幼稚園の集団活動で座れない子がいる場合、その子だけバランスボールのような動ける椅子を使わせることで、他の子と同じ時間座れるようになるケースもあります。

療育選びは保護者の責任

療育の現場でも、「我慢させればできるようになる」といった考えのもと、無理に座らせる指導をするところがあります。しかし、これは根拠のない方法であり、子どもの発達に悪影響を及ぼすこともあります

大切なのは、お子さんの特性を正しく理解し、適切なプログラムを組んでくれる療育を選ぶことです。保護者として、

  • 我が子の特性をしっかり評価しているか
  • 個別に適したアプローチを提案しているか
  • 「根性論」ではなく、科学的根拠に基づいたプログラムを実施しているか

を見極めることが求められます。

まとめ

「じっと座ること」を無理に強いるのではなく、まずは「なぜ座れないのか」を理解することが大切です。子ども一人ひとりに合った対応を考え、適切な環境を整えることで、少しずつ座ることができるようになります。

例えば、「椅子に座って絵を描くのが難しい」子には、まず立ったまま描かせる→クッションを使って短時間座らせる→少しずつ椅子の時間を延ばす、というように段階的に進めると、無理なく座れるようになることがあります。

「周りができているから」「習慣づければできるはず」といった考えにとらわれず、お子さんに合った方法を見つけていきましょう。

もし今、根性論でお子さんの行動を変えようとする療育を受けているなら、早めに見限ることをおすすめします。手遅れになる前に、素人の療育から我が子を救ってあげましょう。


【ご参考】

ゆずのおっちゃんの個人サイト「西村猛オフシャルサイト」では、根拠ない根性論の療育や、子どもを怖がらせて言うことを聞かせる療育といった「ブラック療育」が次々と生まれる理由について、また支援者として、保護者としてどのように注意していくべきなのか、について考察しています。

主に療育事業所オーナーさんや支援者の方向けに書いていますが、保護者の方にも参考にしていただけると思いますので、ご関心がある方は、下記の記事をぜひ読んでみてください(療育業界の裏事情をえぐっています笑)。