
こんにちは。発達支援ゆず代表のゆずのおっちゃんこと、にしむらたけしです。
我が子が自分の力で成長していく姿を見るのは、何よりの喜びですよね。
しかし、療育の進め方によっては、知らず知らずのうちにその成長の芽を摘んでしまうことがあるかもしれません。特に注意が必要なのが「やってあげる療育(支援)」です。
一見親切に見えるこの支援スタイルですが、長期的に見ると子どもたちに思わぬ影響を与えることがあります。
今回は、この「やってあげる療育(支援)」の弊害と、それに代わる主体性を育む療育のあり方についてお話しします。
やってあげる療育(支援)とは
やってあげる療育(支援)とは、お子さんが自分でやるべきことを、大人が代わりにやってしまう支援のスタイルを指します。
例えば、(時間を掛けながらでも)自分で靴を履こうとしているお子さんに対して、「さっと帰ることができるように」と療育担当者が毎回履かせてしまうなどが挙げられます(もちろん急いでいるときは別です。念の為)。
一見親切に見えるこの行為ですが、実は子どもの成長にブレーキをかけてしまうことがあるのです。
やってあげる療育(支援)がもたらす影響
子どもは、自分で何かを達成することで「できた!」という喜びを感じます。
しかし、何でもやってもらうと、自分では何もできないと思い込んでしまうことがあります。
これは、自己肯定感の低下につながります。
たとえば、上述の例のように靴を自分なりのやり方で履こうとしている場合に、大人が代わりにすべての工程を行ってしまうことで、子どもは「やっぱり自分で靴を履くのは無理」と思い込んでしまうかもしれません。
挑戦する場面で失敗を恐れるお子さんがいます。
そこに大人が介入して失敗を防いでしまうと、その子は挑戦そのものを避けるようになります。「どうせやってもらえる」と思わせてしまうのです。
本来は、挑戦する勇気を育ててあげることが大事なのに、これでは本末転倒になりますよね。
主体性を育む療育のポイント
関わる際に大切になるポイントは、お子さんに「考える時間を与える」ことです。
例えば、遊びの中でどうしても難しい課題に直面したとき、すぐに答えを教えるのではなく、「どうしたらいいかな?」と問いかけてみてください。この小さな工夫が、大きな成長につながります。
成功体験は、お子さんの自信を育むカギです。
例えば、自分で靴を履くことが難しい子には、靴のかかとだけ手伝い、残りをお子さんにまかせてみる。そして成功を一緒に喜び合うことで、次への意欲が高まります。
大人がもっておくべき心構え
どんなに小さな進歩でも、それを見逃さずに褒めてあげることが大切です。
「すごいね!」や「頑張ったね!」と声をかけることで、お子さんは自分の努力が認められていると感じ、さらに頑張ろうと思えるでしょう。
反対に子どもの自己肯定感を下げる声掛けのパターンは、子どもなりにできたと思っている事に対し、「それはできて普通だよ」と言ってしまうことです。
この言葉はお子さんに対して「やっぱりこれじゃあだめなんだな」という気持ちを植え付けてしまいます。
少し過剰に褒めてあげることで、お子さんの脳の中に「ドーパミン」と「セロトニン」というホルモンが出ます。
これらのホルモンは、自分に自信を持つと同時に、幸福感を感じることにつながるホルモンです。
質の高い支援者は、子どもの「成功したこと」ではなく「努力したこと」を褒めて認めます。質の低い支援者は「出来たこと」を褒めます。この小さな違いは、後々のお子さんの人生にも大きな違いとなって影響します(幼児期の療育に失敗すると大人になってから困ることになる、という意味です)。
時には失敗することも大切です。
手を出したくなる気持ちを抑えて、お子さんが自分で解決しようとするのを見守りましょう。
失敗から学ぶ力は、将来の大きな財産やお子さんの武器になります。
もちろん、失敗を極端に怖がるお子さんだと、失敗したいくないからそもそも取り組まない、という方もおられるでしょう。
そんなときは、「失敗してもいいから頑張りなさい」という必要はありません。
お子さんが失敗してもへこたれない場面(例えば好きな遊びの中で挑戦するなど)で失敗経験を積ませてあげればいいだけです。
お子さんを注意深く見ていると、失敗しても意外と気にしていない場面や遊びがあるはずです。その中で失敗経験をさせる(見守る)ことで「失敗から学ぶ」ことができるようになります。
発達支援ゆずでの取り組み
発達支援ゆずは、お子さんの主体性を大切にした療育が特徴の一つです。
例えば、片づけが苦手な子どもには、一緒に片づけの手順を考える時間を設ける、大人がさり気なく見本を見せ(モデリング)、お子さんが無意識に行動に移せる(まねぶ)よう促しています。
それができれば「はい!お片付けの時間だから、もう片付けなさい!」「もうおしまい!」と言わなくても、自然にお片付けを促すことができます。
もちろん、促してもうまくいかない場面もありますが、「そんなときもある」と捉え、画一的に「お片付けができないのは良くない!」と叱ったりすることはありません。そもそも大人だって、調子がいい日もあれば、不機嫌な日もありますよね。なのに子どもにだけ「いつでもできないとダメ」なんて、大人の勝手な理屈です。
このような場面では今日は片付けはなし、ということもありますし、お子さんのペースで片付け始めるまで待つ、ということもあります。
要は、画一ではなく、その時々で状況をみながら大人の対応を変えていきます。
もちろんいつもお子さんの動きに合わせ続けることができない場合もあります。
例えば担当者が次のお子さんが来られるなどのため時間的に厳しい(最後までお付き合いすることが難しい)時などです。
このような場合は、保護者の方に「次のお子さんが来られますので最後までお付き合いできないですが、もしお母さん(お父さん)にお時間があれば、ご自分のペースで片付けるまで居ていただいて大丈夫ですよ」とお声がけし、お任せすることもあります。
やってあげる療育もしないですし、大人の力で言うことを聞く子を育てるといった間違った方法も行いません。
私たちはプロです。
「子どもが自発的に自然に取り組める」ように持って行くことができるのが、プロの療育です。全スタッフがそれを実践できるよう日々研鑽しています。
また、こういった事例を通して保護者の方にも主体性を育むためのコツをお伝えし、ご家庭と療育の連携を常に行っています。そのために「親子同室」の方針を貫いているのです。
ゆずをご利用の保護者の方は「我が子のことを理解してあげたい」「親としてできることをしてあげたい」という療育を受ける目的をしっかりと持った方ばかりですので、どなたもゆずスタッフの話を理解した上で、ご家庭でも実践してくださっています。
この療育とご家庭の連携によって、少しずつでもお子さんの行動変容を引き出すことができています(反対に言うと、療育と家庭の連携が上手く行っていない場合、発達は引き出せません)。
まとめ
やってあげる療育(支援)は、一見すると優しさの表れに見えるかもしれませんが、長い目で見ると子どもの成長を妨げる要因となることがあります。
療育の目的は、子どもが自分の力で成長できるよう手助けをすること。そのためには、適切な距離感を保ちつつ、子どもの可能性を信じて見守る姿勢が大切です。
何でもやってあげることは親切でも何でもないですし、反対に「自分でできるようになりなさい」と手を貸さないのも問題です。
都度お子さんの状況を見ながら、手伝うときと見守るときを上手く使い分けることができれば、お子さんの自己肯定感を高めながら、「上手く失敗させていく」ことができます。
それがお子さんなりの発達を最大に引き出すことにつながります。