
このシリーズでは、ゆず代表で理学療法士の西村猛と、ゆず言語聴覚士の西村千織(むぎちょこ)が出演・監修しているYouTubeチャンネル『こども発達LABO.』や『ゆず公式YouTubeチャンネル』で取り上げたテーマをもとに、専門的な解説を加えてご紹介しています。
こんにちは。言語聴覚士のむぎちょこです。
今回は、「人の話が聞けない」と感じられることの多い自閉スペクトラム症(ASD)のお子さんに向けて、「聞く力」を遊びを通して育てていくための3つの方法をご紹介します。楽しく遊びながら、聞く力と体の発達を同時に引き出していきましょう。
なぜ「話が聞けない」のか?
「先生の話を聞いていない」「声をかけても反応しない」
集団場面でよく見られるお子さんの姿に、戸惑いや心配を感じたことはありませんか?
こうした行動は、決して「やる気がない」「わざと無視している」ということではありません。
背景には、音や情報の選び取りが難しいという発達的な特性が関係しています。
特に自閉スペクトラム症のお子さんは、「選択的注意」と呼ばれる能力が育ちにくい傾向があります。これは、たくさんの音があふれる環境の中で、必要な音だけを選んで聞き取る力のことです。
この力のことを、「カクテルパーティー効果」と呼びます。
例えば、にぎやかなパーティー会場で目の前の人の声だけを自然と聞き分けるように、私たちは無意識のうちに周囲の音を取捨選択しています。
しかしこの機能が未熟な子どもたちは、園や教室でこのような困りごとが起こりやすくなります。
- 一斉指示に気づかず、動き出せない
- 周囲の雑音に気を取られてしまう
- 自分の名前を呼ばれても反応がない
- 声がけに気づかず、集団行動から遅れてしまう
このような困りごとは、「聞く力」を育てていくことで改善の可能性があります。
そして、その練習は「遊び」を通してこそ、自然に、楽しく、継続的に行うことができます。
聞き取る力を伸ばす遊び3選!
①だるまさんが転んだ
「だるまさんが転んだ」は、決まったフレーズに集中して耳を傾ける力を育てるのにぴったりの遊びです。
鬼が「だるまさんが転んだ」と言った瞬間に体を止めるというルールは、聞こえてきた音にすぐに反応する練習になります。また、「そのフレーズだけを注意して聞く」という経験を繰り返すことで、選択的注意力が育ちやすくなります。
さらに、体をピタッと止める動作は運動のコントロール力にもつながり、「聞く力」と「体の調整力」を同時に育てられる一石二鳥の遊びです。
②カルタ遊び(聞いて取るゲーム)
カルタ遊びでは、読み手の言葉を最後まで集中して聞くことが求められます。
似たような札がある中で正しいものを取るには、「ことばを聞き分ける力」と「集中力」が必要です。
ゲーム要素があるため、「勝ちたい」「早く取りたい」といった意欲が自然と生まれ、聞く姿勢の向上にもつながります。
さらに、目で文字を探す視線のコントロールも必要となるため、視覚的な注意力のトレーニングとしても有効です。
③旗揚げゲーム
「赤あげて、白さげない」といった指示を聞いて、手に持った旗を動かすこの遊びは、聞いた言葉を体の動きに素早く変換する力を育てます。
特に、右と左を間違えない、上下の動きを瞬時に判断する、という複雑な処理が必要になるため、脳の働きと体の連携を高めることができます。
「聞いて、考えて、動く」
この一連のプロセスを繰り返すことで、自然と聞く力が育っていくのです。
正しい評価とプログラムが大切です
遊びの中で聞く力を育てるには、まずは正しくお子さんの今の状況を評価することからはじめることが大切です。
ゆずではすべてのお子さんに発達評価を実施し、そこから導き出されたお子さんの課題に対して、楽しみながらも発達を引き出すプログラムを実施しています。
我が子のことをもっと知りたい、我が子に合った手立てを見つけて上げたいと考えている保護者の方は、一度ご見学にお越しください。
ゆずの発達検査やプログラムの実践について、詳しくご紹介します。
こども発達LABO.のYouTubeチャンネルでは、今回ご紹介したような「発達や療育のヒント」を、保護者の方にも分かりやすくお届けする動画を多数公開しています。
お子さんの発達や接し方に悩んだとき、ぜひ他の動画もご覧になってみてください。きっとヒントが見つかるはずです。